手塚治虫とは別の方法論で人類の業と輪廻を説く「真説 ザ・ワールド・イズ・マイン」

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圧倒的なテンションと勢い

これほどに壮大なスケールの物語を作れる人間は、新井英樹以外にはあり得ないだろう。最初から最後まで、すべてが圧倒的なテンションと勢いのまま、畳み掛けるように怒濤の展開で進んでゆく。

人間が持つ倫理の枠を超えた、原始の感覚を持つモンの破壊的な行動は、荒ぶる神スサノオのようで、この世界観の無軌道ぶりと荒唐無稽さは、神話に匹敵するスケール感を持っている。
それと対比するように、脆く常識的な存在であったトシの表情と目つきが、人を殺し慣れていくにつれて、どんどん変わっていく様子がすごかった。

常識や定石を超越しているので、決して推薦図書になったりすることはないだろうし、マンガランキングのようなものとも無縁の作品だろうけれども、だからこそ生み出される、ものすごいオリジナリティーがある。
人物の絵が荒くて汚いという難点はあるものの、人物のキャラクター設定の奥行きということになると、執拗なまでに緻密に、細部にいたるまで作りこまれている。
手塚治虫とはまったく別の方法論で、何億年というスパンでの人類の業や輪廻までを扱い、国際政治や宗教をも包括する巨大なテーマを描こうとした、途方も無いチャレンジの結果出来上がった作品だと思う。

名場面


今お前がふりかざす気持ちも善悪も、へ理屈だ。
俺は本当のことだけでいい・・
俺にもお前にも生き物には、生かすも殺すも好きにできる力がある。
・・使え。力は・・絶対だ。(1巻p.162)


人間じゃない・・鬼神さ。(2巻p.194)


モンちゃんにはわからん思う。
ボク凡人やからようわかる。
神さんおるわ・・
バチ当ててぎょうさん殺すんも商売や。
モンちゃんいてまえや。
商売敵やで。(2巻p.249)


彼女は懐かしい感覚に包まれた。
自分の中にトシだけがいた
未来だけを見つめていたあの頃
外科病棟509号室の窓より
飛び降りる10分前の出来事だった。(2巻p.444)


おせっかいだ。
というよりも、おせっかいって名の暴力だ!
私は今オメをぶん殴ってんだ!
良ぐも悪ぐもおせっかい焼ぐナが私だ!
だから産め!(3巻p.600)


死は未知、畏敬。
対処法ゆうたら太古の昔からお祭りや。
死に生が騒ぐんは死のすぐ隣りに活きのええ生があるからや。
せやから人は死をま近にした時選択をせまられる。
生きて喜ぶか、死んで楽になるか。
判断のようできんアホは自分を導く力ある何かに従うのみや。
せや圧倒的な力や。
今ならようわかる。
人類が知恵をもち200万年かかって到達した世界は結局力の世界や。
生殺与奪こそ力の象徴や。
現代の王様たちは人ようけ殺して人気者になってるやないか。
生殺与奪のチャンピオンが神様なら、
ボクらそこそこチャレンジャーや・・ちゃうか?(4巻)


・・マリア。
お前は・・生きることばかりだな。(4巻)


・・マリア、ずっと、俺といろ。(4巻)


切ねぐなるナだ。
私が・・起ぎてらがら
みんな・・大丈夫
・・眠れ。(4巻)


人殺しても何も感じへん!
経験してみるもんやで!
殺して殺して殺しまくったら飽きてしもた!
マニュアルいらず!
ほんまチョロいで努力もいらん!
人間っ簡単に死にすぎや!
せやのにっ・・なんでや?
守るのほんまキっついで!(5巻)

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