ローマ人の物語「すべての道はローマに通ず」

ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉 (新潮文庫)
ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず(上下巻)(塩野七生/新潮社)

筆者は、「ローマ人の物語」という長いシリーズの中で、道路や上下水道などの「インフラ」についてだけで一つの大きな章をとった。大きな歴史の中でのテーマとしては、もっと書くべきテーマがあるだろうはずなのに、あえて「インフラ」についてここまでのページを割いている点、他の巻と比べてかなり趣向が変わっている。しかし、それだけのことをする意味がある、重要なテーマであると思った。
ローマ帝国のインフラというのは、工夫と技術のかたまりのようなもので、ローマという国の強さと繁栄は、整備されたインフラにこそ、そのベースがあったのだということが、この本を読むとよくわかる。
それは、執拗と言っていいほどのこだわりようで、ローマ人という民族のすごさを最も端的に表しているのは、道路や上下水道という生活・軍事の基盤をがっちりと固めて、決しておろそかにしなかったということだろう。
ローマの歴史の中に見所となる出来事はたくさんあるけれども、その歴史の隠れた立役者である「インフラ」に目を向けて細かく分析をしたこの章は、読み物として面白いだけでなく、現代にもそのまま通用する知恵がたくさん含まれていると思った。
【名言】
常に複数の選択肢を持つべきとするローマ人の考え方は、ごく自然に、街道のネットワーク化に向かったであろう。全線舗装の街道は、ローマ人の発明ではない。しかし、道とはネットワーク化してこそ飛躍的な効果をもたらすことに気づき、それを実現したのはローマ人である。ローマ街道は、街道網として考えないかぎり、その真の偉大さは理解できない。(上巻p.87)
インフラとは、経済力が向上したからやるのではなく、経済力を向上するためにやるものだと、彼らは考えていたのであろうか。(上巻p.109)
「ローマ軍は兵站で勝つ」と言われていた。ローマ軍では、一人一人の兵士の精神力に期待するのは最後にくることで、それ以前に成されていなければならないのは、個々の兵士が精神力を最高に発揮できるための環境の整備、つまり「ロジスティクス」であると考えられていたのである。(上巻p.164)