あさきゆめみし

あさきゆめみし―源氏物語 (1) (講談社コミックスミミ (960巻))
あさきゆめみし(大和和紀/講談社)

※コミック版全13巻、文庫版全7巻
遅ればせながら、高校の古文の授業以来、初めて源氏物語を読むことにした。
といっても、いきなり原文は読めそうになく、現代語訳の小説でもまだ敷居が高いので、まずは、大和和紀のマンガ版から読み始めることにした。
この「あさきゆめみし」は、中高生の時から周りで評判だった覚えがあるけれど、よくある「まんが日本の歴史」みたいに、読む気が起きないようなヘタ絵のマンガを想像していたので、当時はまったくノータッチだった。
今にして読むと、この完成度はスゴい。源氏物語の世界観にぴったりとハマった絵柄。細かく描きこまれた建物や調度品や着物の模様。マンガといえど、表現においては小説に劣らないばかりか、当時の宮廷の雰囲気をわかりやすく伝えるという意味では、これに勝るメディアはないだろう。
登場人物の女性が多すぎて、時々、顔の区別がつかなくなって、「これは誰だ?」ということもあるけれど、これは誰が描いても、おそらくそうなるだろう。
源氏物語は、光源氏の優雅な生涯を描いた、華麗な物語かと思っていたのだけれど、実際にはそれは前半までの話しで、物語のほんの一面にしか過ぎないということを知った。
本当にスゴいのは、あまりよく知らなかった後半部分だ。諸行無常、因果応報を地でいくような、後半の展開はとんでもないことになっている。最後まで通してみると、外伝的な巻である「宇治十帖」が一番好きだ。
あらためて、源氏物語というのはよく出来た物語だと思った。これほど密度の濃い大作が、平安時代に作られていたということには、本当にびっくりする。そして、これだけの内容を持っているからこそ、1000年以上の長きにわたって人々に読み継がれてきたのだと思う。
この「あさきゆめみし」のおかげで、いったいどれほどたくさんの人が「源氏物語」に興味を持ったのかと思うと、作者には国民栄誉賞が与えられてもいいくらいだ。