女ごころ

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女ごころ(モーム/新潮社)

未亡人である美人のヒロインの周りに、まったく性格もバックグラウンドも違う3人の男が登場して、さあいったいどうなるのか?さあいったい誰を選ぶのか?という、まるでトレンディードラマのような物語。ちゃんと、サスペンス的要素まで加えられていて、全9回ぐらいでドラマ化すれば、いい作品になるに違いない。舞台も、フィレンツェの丘の上にある別荘地で、なんだかおしゃれだ。
先の展開がまったく読めないところと、さらに予想を大きく裏切る展開には、かなり度肝を抜かれた。それでも、その物語の成り行きと幕引きには妙に説得力があって、このモームという作家は、よくよく人生を味わい尽くした人なのだろう。
主人公の女性が、けっこうズバズバと率直にものを言うタイプで、内面の気持ちの移りかわりがとてもわかりやすい。その変化は、理屈であらわせるようなものではなく、「なんで!?」と思うような不可思議なところもあるのだけど、そのあたりが妙にリアルだなあとも思う。女ごころの、計算高い悪魔のような理知の部分と、気まぐれな天使のような感情の部分、両方のブレンドを見事に表現していると思った。
原題は「Up at the Villa」というらしく、邦訳のタイトルは全然違うのだけど、「女ごころ」というのは、とても上手くつけたタイトルだと思う。こちらの邦題のほうが、はるかに的確に内容を言い表している。
【名言】
彼女には、この話の方向がどこをめざしているかわかっていた。しかし、そのようなことにはぜんぜん感づいていないみたいに、彼女は唇に、晴れやかな、同情的な微笑を浮かべながら、彼のほうを見やった。彼女は快い興奮をおぼえてきた。(p.13)
あたしは十六の年から、みんなにきれいだ、きれいだといわれてきましたので、もうそんなことでは大して興奮などしなくなりましたわ。女がきれいだっていうのは、一種の財産みたいなもんです。それであたしだってバカじゃありませんから、その価値ぐらい知っていますわ。(p.32)
あたしがたいていの女の人よりもきれいだということ、自分で知らないとしたら、よっぽどどうかしてますわ。自分には人に与えるべきあるものが備わっていて、与えられた人にとって、それは非常に大きな意味をもつものだってこと。あたしもときたま感じたことは確かですわ。そういうと、ひどくうぬぼれているように聞こえますかしら?(p.50)
あんなに多くの欠点を持ちながら、彼に対してかくまで気安く感じられるのはなぜであろうか。メアリイはふとそう思った。それは、こちらがまったくありのままの自分でいることができたからである。彼の前では決して見せかけをする必要などなかった。(p.141)
しかし今ではもう、あなたのことを怒ってなどいませんよ。面倒な事にまきこまれたとき、ぼくを呼んで下さったのが気に入りました。(p.146)
「そうね、もしどうしてもあたしと結婚をお望みでしたら・・。でも、あたしたちのばあい、乗るかそるかの冒険ですわ」
「ねえ、メアリイさん。それでこそ人生ですよ。乗るかそるかやってみるのが」(p.149)

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