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2005年08月31日
友だちいないと不安だ症候群につける薬

友だちいないと不安だ症候群につける薬
(齋藤孝/朝日新聞社)
【コメント】
中学生を主な対象として書かれている本で、この年齢層と同じ目線に立って、真剣にその問題を解決しようとし、しかも的確な言葉を用いて説明出来る人というのは本当に少ないと思う。
中学二年生(14歳)というのは確かにとても悩み多く、しかも周りからしても扱いづらい年齢だと思うけれども、すべての言葉に耳をふさぐというわけではなく、自分の問題を解決してくれる、筋道がきちんと通った言葉は、敏感に察知して受け容れるものだと思う。
友だちを大事にするべき、いじめはやめるべき、というのを単なる道徳的な観点からではなく、学校生活を楽しく生きるための知恵として説明している。
そこで身につけた友だち力というのは生涯にわたって役に立つものであり、その獲得は早ければ早いほどいいという。
教育に最も重要なのは優れたテキストだというのは、教育学を専門にする斎藤孝さんの持論だけれども、この本自体、子供に読ませたい、とても優れたテキストだと思う。
【名言】
友だち力は社会的な能力として非常に重要で、特に小学校、中学校、高校は、友だち力が高度に要求される社会です。
開放的な大学に比べて小中高の場合にはクラス制があり、そこでうまくいかない場合には、その一年が台無しになってしまいます。場合によっては、三年間がつまらなくなってしまうという深刻な事態を引き起こしかねないのです。そういう意味で高度な友だち力が十代前半に要求されています。(p.15)
「友だち力」を幼少期にどうつけるかは、家庭が重要には違いないのですが、その後、人生のターニングポイントともなるべき重要な「友だち力のゴールデンエイジ」があるのです。それが中学生の時期なのです。小学生の時期は、それなりに社会の中で過ごしやすい時期です。小学生であれば誰もがかわいがりますし、小学生だとみんなが語りかけるし、地域も応援します。お父さんお母さんも熱心に関わります。それが、中学校に入ったとたんに、どこからも見向きされなくなる。それは、端的に言えばかわいくないからです。かわいくないというのは恐ろしいことでして、大人は子供がかわいいうちは自分から関わりたくて仕方ない。ところが、子供が大きくなってしまい、自分の世界を閉じて作ろうとした時には、親や他の大人は身を引いてしまうことがあるのです。(p.206)
2005年08月28日
鵠沼海岸
湘南の鵠沼海岸にサーフィンに行く。
師匠のりあんがずっとアウトドアトレーナーの研修に行っているため、しかたなく自習。
まだ、いい波が起こるポイントの見当ををつけられないので、他の人がちゃんと乗れている場所にまぎれ込むのだけれども、夏休み最後の日曜日でとにかく人が多く、ぶつかりそうでなかなか落ち着かない。
タオルを取りに車にいったん帰り、シャワーを浴びてまた車に戻ると、鍵は車中に入ったままなのに、すべてのドアがロックされていることが判明。
『鍵が閉じ込められました・・』
近くのガソリンスタンドに連絡すると、金属の長い板を持った特殊部隊のような人がきて、こじ開けてくれた。
こんなチャチな道具で簡単に開いてしまって、この車、大丈夫なのか?と不安になったが、その脆弱なセキュリティのおかげで助かったので、文句はいえない。
2005年08月26日
セリラヂオ
毎週金曜日だけ、セリがマスターをつとめるバー。
他の曜日は他の人がマスターをやっていて、別の店になっている。
たった一坪のスペースのバーのため、その場にいる人同士が必ず知り合いになれるという特典がある。
これだけ客同士の距離が近いと、個別の会話というのはありえず、店全体で一つの会話に溶け込んでいくので、初対面だろうとなんだろうと、自然にお互いの会話が始まることになる。
今日は珍しく、客が一人だけだったので、セリに早めの誕生日プレゼントを渡し、じっくりと話しをしてきた。
【店舗情報】
東京都渋谷区神宮前(正確な住所は不明)
明治神宮前駅のGAPの交差点から明治通りを渋谷方面に進んで右手。
途中、らせん階段を2Fに上がったところ
03-3400-7133
2005年08月24日
洋食亭ブラームス
自由が丘駅南口のすぐ近く、ブックファーストが入っているビルの3Fにある。
オムライスが売りの洋食屋で、他にもハヤシライスやカツカレーやエビフライのような洋食屋っぽいラインナップが揃っている。
オムライスは卵をたくさん使って、トロトロの状態でチキンライスを包んでいて、オムライスの旨さを極限まで引き出したつくりになっていると思う。
ほとんどのメニューにデミグラスソースが使われているのだけれども、このソースがとても旨い。量はどれも一般的な量よりも少し多め。
手軽に本格的な洋食を食べられる、ありがたい店。
【店舗情報】
目黒区自由が丘1-8-21 メルサ1 3F
03-3724-6501
営業時間:11:00~21:30(年中無休)

2005年08月23日
OUT

OUT(アウト)
(桐野夏生/講談社)
【コメント】
コンビニ弁当の製造工場で深夜に働く主婦達が主人公、という設定がまずスゴい。
それぞれの事情を抱えて、労働条件の厳しい夜間パートの仕事をこなす中年の女性達が、侘しくも淡々とした日常から、殺人事件の関係者として非日常の出来事に巻き込まれていく過程の心理描写がとても細かい。
主婦4人のキャラクター設定がとても現実味があり、どの人も実在していそうな存在感がある。そういう彼女達が、半ば偶発的に、半ばは自発的に事件に関わっていってしまうのは、貧しさや自堕落さや嫉妬といった、生活の中に潜む暗い要素が原因であり、それによって抗いようもなく犯罪に引きずり込まれていく様子が克明に描かれている。
「OUT」というのは、いつ終わるとも知れない日常からの「脱却」を求める彼女達の願いを表しているのだと思う。その糸口を得るためには、死体を解体するという作業すら厭わないという強い渇きが、主人公の雅子の心の奥底にはある。
灰色でくすんだ印象の舞台設定と同様に、雅子という人物も、余計なものが削ぎ落とされた、合理的で直截的な性格として描かれていて、自分の頭と価値観で考えて冷静に行動する姿がいい。
ミステリーというよりも心理サスペンスという感じで、読み始めたら止まらない吸引力がある作品。
【名言】
雅子の頭の中では地図が広げられ、今後の予定があれこれと組み立てられていることだろう。雅子にとって、このことは完全な業務なのだとヨシエは感じとった。それも、失敗を許されない業務。(p.143)
2005年08月22日
蚊トンボ白鬚の冒険


蚊トンボ白鬚の冒険 (上)(下)
(藤原伊織/講談社)
【コメント】
主人公の頭の中に蚊トンボが入り込んで、その蚊トンボが身体能力を驚異的に高めたり、宿主と会話が出来たり、という設定は岩明均の「寄生獣」にとてもよく似ている。
株や車メーカーの構造問題など経済的なテーマを下地にして、主人公と裏社会との対立がテーマになっていたけれども、あまり現実味はなかった。
登場人物のキャラクターも個性がありすぎて、かなりマンガ的な小説。
【名言】
手に職を持ち、毎日、熱心に働いている。きみにはきっと、平穏で堅実な将来が待っている。いずれ、いい家庭を持つことにもなるでしょう。それこそ、もっとも価値のある人間の生き方だと思う。なんだかそういった生活がうらやましくなってきた。
さっきふいに思いあたったんです。邯鄲の夢でないのは唯一、きみのおくっているような生活以外にないのだと。(下巻p.160)
2005年08月21日
葉山BlueMoon
烈に誘われ、葉山・一色海岸「Blue Moon」での歩さんのトークイベントに参加する。
歩さんは、沖縄のビーチロックカフェをたたんで、奥さんと子供2人と共にまた世界一周の旅に出かけるという。いくつになっても、環境が変わっても、昔と変わらない生き方を自然体で続けているということに元気づけられる。
いい手本が周りにたくさんある。あらためて、そう思う。
2005年08月20日
多摩川花火
二子新地の、会場の目の前に住む雄介が場所取りをしてくれたおかげで、最も花火に近いポールポジションに陣取ることが出来た。
あまりに打ち上げ場所が近いので、地面から火柱があがっているのが見えて、花火はほぼ真上の位置に上がる。音と光が同時に届いて、視界を埋め尽くすくらいに大きく広がった。
若干マイナーな花火大会のためか、打ち上げ数もロケーションもいい割りに、横浜や隅田川の花火よりもずっとスペースに余裕がある、穴場的な存在の多摩川花火。
2005年08月19日
BRAIN VALLEY


BRAIN VALLEY(上)(下)
(瀬名秀明/角川書店)
【コメント】
あらゆる生物の中で「神」を持つのは人間だけであるという。神は人間の脳の中で創られるからであり、逆に考えれば脳を人為的に操作することが出来るとすれば、神を自分自身の手で創造出来るということでもあるのだ。
人間という存在を解き明かす上での最大の鍵であり、最大の壁でもある「脳」の話題を中心として、話しのテーマは宗教・宇宙生命・霊長類学・臨死体験・実在論、などあらゆる分野に広がってゆく。哲学とはまったく別のアプローチから「神」とは何か、についてここまで迫っているということに、本当に驚く。
医学系の出身である著者の膨大な知識と構想力の組み合わせによって書かれた、すごいスケールの作品だった。これこそが読書でしか味わえない感動なのだろうと思う。
【名言】
なぜそれに気づかなかったのだろう、とメアリーは思った。真に研究すべきことは、いかに死期を延ばすかではない。いかに死ぬかだ。死ぬとき、人はどうなるのか。死んだらどうなるのか。それこそ、いま求められている学問なのだ。(p.28)
ヒトは誰も「心」の呪縛から逃れることは出来ない。その証拠に自分は父を嫌悪し、息子を嫌悪し、妻を嫌悪している。そして嫌悪の感覚を作り出しているのは脳であり、体内を巡る血液中の免疫細胞であり、ストレスタンパク質であり、ホルモンであり、神経伝達物質なのだ。すなわちこの体であり、すなわち「心」であり、すなわちニューロンネットワークと無数の分子なのだ。(p.151)
誰にでも死は訪れる。生まれたからには死ななければならない。自然の摂理だ。
だが、それならば、なぜもっと死を積極的に受け入れないのか。
人間ならばプライドを持ち、心地よい感覚を欲し、愛されたいと願う。そんな当たり前のことが、死の瞬間にはおざなりにされてしまう。死の瞬間が最高のものでなくて、何が素晴らしい人生か。(p.191)
どうしても神の声を聞きたい。神から新たな叡智を授かりたい。そう思った。そして私はひとつの解決策を見出したのだ。そう、ヒトの脳よりも優れた脳を創ればよいではないか。(p.254)
2005年08月18日
みんなのいえ

みんなのいえ
(三谷幸喜/東宝)
【コメント】
この映画が描こうとしているテーマは、喜びや苛立ちや辛さや楽しさといった、モノを真剣に作ろうとする過程に現れる感情すべてだ。
ある若い夫婦が郊外に一軒の家を建てることを決めるところから、物語は始まる。
一つの大きなモノ作りが始まり、たくさんの人たちの思いとこだわりが注ぎこまれ、そして対立が始まる。
新と旧、年長者と年少者、理想と現実の食い違いは何の制作の場でも普遍的に起こる対立だけれども、こだわりとこだわりの熱いぶつかりあいが、家という一世一代の買い物でくりひろげられると、とてもエキサイティングなものになる。
配役がまた素晴らしい。昔気質の大工に田中邦衛、洋風かぶれの気難しいデザイナーに唐沢寿明。その他のキャストもそれぞれ、ものすごく役柄に合ったセレクションがされている。
自分の意見を曲げないデザイナー(唐沢寿明)は大工の連中から反発を買うが、家が出来上がった後、大工の一人から「オレ、あんた好きじゃねえけどさあ、オレこの家好きだ」と言われる。モノを作る人間にとってそれは、最高の賛辞なのだろうと思う。
何らかの形でモノを作っている人に、是非とも観てみてほしい作品。
2005年08月17日
プロ論。

プロ論。
(B-ing編集部/徳間書店)
【コメント】
各界の著名人達への、「プロとはなにか」というインタビュー集。
成功していると言われている人の言葉は、成功したからこそ注目されるもので、そのほとんどは、後から結果論として辻褄をあわせたものではないかと自分は思っている。
だから、言葉のすべてを鵜呑みにするわけにはいかないと思うけれども、中には幾つか、体験から生まれた知恵の結晶のような言葉がある。それにめぐりあえただけでも十分にこの本を読む価値はあると思った。
【名言】
「自分の職業に関して第一人者になるためには、少なくとも知るべきことは全部知っておかなければなりません。もちろん勉強が必要です。たとえば店長でも、店舗経営に必要な全部のことを勉強しようと思ったら半端な努力では済まない。でもマスターしないと、その職業を自分でコントロールすることは不可能なんです。この過程で得られるものは途方もなく大きい。」<柳井正>(p.63)
仕事の醍醐味は苦しさにこそあるんです。挑み続ければ、負け続ける。でも、一流を目指そうという気概とその苦しみは、必ずいい仕事を残してくれます。一流を目指すのも二流でいるのもどっちにしても苦しいんです。でも一流になるための苦しみのほうが、自己欺瞞で苦しむより、自分のプライドを捨てるより、まだ楽です。<中島義道>(p.171)
2005年08月16日
青山ブックセンター
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自由が丘は、店舗の入れ替わりがものすごく早い。
自由が丘には巨大な本屋はなく、大きくてもワンフロア程度の中規模な本屋しかないのだけれど、その中でも一番使い勝手がいいのは正面口改札を出てまっすぐ進んだところにある「芳林堂書店」だった。
ひととおりのジャンルが揃っていて、それなりに大きく、平日は22時半まで営業と、自由が丘では一番遅くまで営業している店舗だった。その芳林堂が突然7月末で閉店になってしまい、これにはかなりショックを受けていた。
しかし今日、店舗跡地の前を通りかかったら、今度は9月9日に「青山ブックセンター」がオープンするという。青山ブックセンターはセレクションがマニアックなので、自分の趣味と合うかどうか期待と不安が相半ばするところだけれども、いずれにしてもまた新しく本屋が出現するというのはとても嬉しいニュースだ。
青山ブックセンターは去年まで、自由が丘南口の駅前で営業をしていたが、それは今は「ブックファースト」に入れ替わっている。
ここは自宅から一番近い本屋なのだけれど、売場面積が少ないためにコンピュータ書籍の取り扱いが一切なかったり、地下なので携帯の電波が入らなかったりで、あまり自分の気に入っていない。
近所にお気に入りの本屋があるかどうかは、結構生活に大きな影響を与えると思う。
【店舗情報】
目黒区自由が丘2-10-8 自由が丘エヌケービル2F
営業時間:11:00~22:00 年中無休
書店売場:約160坪
2005年08月15日
絶望に効くクスリ

絶望に効くクスリ 4
(山田玲司/小学館)
【コメント】
山田玲司は、不器用な人だと思う。いつまで経っても絵はそれほど上手くならないし、インタビューも、あまり上手に話しを聞きだせるようなキャラクターとは思えない。
でも、その分子供のような純粋さがあるし、山田玲司にしか出せない味というのが、ものすごくある。そういうマンガ家が各界の著名人と語った対談集。
インタビュー相手のカテゴリーは様々だけれども、それぞれの人の描きかたがとても独特で、それでいてポジティブで、本当に元気がもらえることが多い。
糸井重里とのインタビューの中にあった、「すべての人の中に尊敬する要素を見つける力」というのは、山田玲司に関する最も特徴的な美点であると思う。
【名言】
「可能性があるところには、必ず種がまかれちゃうんですよ。みんながいろいろなことをヨーイ・ドンで始めて、負けてもいいんだよ。「あれは違うな」って思わせるために俺はいる・・ってのでもいいしね。ある意味では・・みんなが他人の犠牲でもいいんです。」(p.23)
2005年08月14日
FAUCHON APPLE TEA

今までに出ていたペットボトルの紅茶というのは、無味すぎるか甘すぎるかのどちらか(たいていは甘すぎる)で、なかなか丁度いい具合のものが出なかったのだけれど、このFAUCHON APPLE TEAは最高のバランスを発見している。
果汁0.7%という微妙なブレンドの賜物と思われます。
2005年08月11日
イチロー262のメッセージ

イチロー 262のメッセージ
(『夢をつかむイチロー262のメッセージ』編集委員会/ぴあ)
【コメント】
イチローのすごさは、野球センスにのみあるのではなく、常に自分を客観視して分析しようとする視点にあるのだと思う。
持って生まれた才能ももちろんあるには違いないけれども、イチローはそれ以上に努力の人だ。成功しても失敗しても、その場限りで終わらせようとせずに、常にそれを元に次に繋げる姿勢を持っているから、今までのその膨大な蓄積が頭と体に残っているのだろう。その熱心さを、イチローは「プロであれば当然」だと言う。そういうクールな思想から紡がれた一言がこの本にはたくさん含まれている。
【名言】
「長く続く強い発見は、凡打をして、その凡打の理由がわかったときなのです。」(p.28)
「ミスショットの原因は気持ちの中にあると思っていたのです。だけど違っていました。技術によるものでした。」(p.57)
「どんな状況でも、自分のパフォーマンスをしなくちゃいけません。どんな状況でも、一定のラインをクリアするのがプロですから」(p.146)
「自分の「形」ができていない状態では、いろいろなことを感じられません。」(p.180)
2005年08月08日
天才になる瞬間

天才になる瞬間―自分の中の未知能力をスパークさせる方法
(斎藤孝/青春出版社)
【コメント】
斎藤孝という人は分析好きな人だ。あらゆる感覚的なテーマを理論化して言葉に落とし込もうとする。この本では、古今東西の「天才」と呼ばれる人物を分析対象にして、そのブレイクスルーの原因となった要素について考察をしている。
ただ、どれも、伝記的な読み物としては面白いけれども、体系化するにはちょっとこじつけの風が強く、納得度はあまり高くなかった。
【名言】
ウォルト・ディズニーに憧れていた手塚治虫は、「白雪姫」だけで50回以上、「バンビ」は80回以上観たといいます。「優れたものを徹底的に細分化して研究する」という作業は、素人がプロの水準に突き抜けるための常套手段でもあります。(p.64)
2005年08月05日
蒼穹の昴

蒼穹の昴(全4巻)
(浅田次郎/講談社)
【コメント】
どこまでが史実で、どこからが仮想の出来事かはっきりわからないのだけれども、基本的には実際の人物や事件がベースになっているので、中国の清時代の歴史を小説仕立てで面白く理解することが出来る。
いかにして清王朝が栄え、衰えて、外国に侵略をされていったかがわかりやすく書かれてあり、特に、李鴻章がイギリスと香港租借についての交渉をする場面は、すごい臨場感がある。
日本はいろいろなものを中国から取り入れたけれども、科挙と宦官の制度は取り入れなかった。もしそこまで中国の真似をしていたら、19世紀のうちに日本はとっくにどこかの植民地になっていたかもしれない。
清王朝の最後までは書かれていなくて、物語は途中まで終わってしまうので、この続きの、孫文や毛沢東の話しについてもっと読みたいところだった。
文庫版は全4巻。なかでも1巻が、中国のスケールの大きさを感じさせる内容で面白かった。
【名言】
欧州列強には植民地経営によって自国を富ませてきたという長い歴史がある。そしてこの東洋の大帝国をいかにして収奪するかは、地球上に残された最後にして最大の懸案にちがいなかった。(2巻p.63)
2005年08月01日
魂萌え!

魂萌え !
(桐野夏生/毎日新聞社)
【コメント】
60歳を目前にして、夫に先立たれた未亡人が主人公という、ちょっと変わった設定の小説。60歳近くなった時の生活ということになると普段なかなか想像しにくいけれども、当然ながら何歳になっても悩みは尽きることはないだろうし、体力が衰えたり病気がちになったりということもあるし、より悩みも情熱も深くなっていくものかもしれないとも思う。
世の中の雑誌やトレンドは、若い世代ばかりにスポットをあてているから、老年の生活について考える機会はあまりないけれど、年をとってから起こる家族の問題や、遺産の問題、人間関係の変化など、誰の身にもやがては訪れるのだということがリアルに感じられる話しだった。
桐野夏生にしては、あまり異色な部分はなく落ち着いた感じ。その分、タイトルと表紙のセンスに異色さが出ている。
【名言】
自分の未来はあと二十年。それも、老いや病気が待っている暗いものだ。夫もいない自分が頼るのはお金と健康だけなのだ。この実感は、若い者とはどうしても共有できない。(p.170)
