
名前からして、どんなすごい城があるところなんだろうと期待して行った。街なかで見かけた城も、いかにも「城」っぽい形をしていて良かったのだけれど、それよりも、この街は橋が良かった。

タイン川の上にかかる、バリエーション豊かな6本の橋。色も形もそれぞれに趣向を凝らしていて、どの橋にも個性がある。

とても高低差が大きく、坂の多い街で、移動はなかなか大変だけれど、見晴らしの良い場所がいたるところにあって、何百年もの年代の違いがあるだろう新旧の建物が入り混じった街並みを見渡すことが出来る。


ニューキャッスルからの帰り。切符を買って、次のロンドン行きの電車の時刻を探したら、「今日はロンドン行きの電車は無い」という。いきなり、路線の途中が断絶しているので、「その区間はバスで」ということになった。民族大移動のように、電車を降りて何台ものバスに乗り継ぐ人々。電車での移動の倍ぐらいの時間がかかったけれど、これはこれで面白かった。
» 2009 » 3月のブログ記事
とても残念なことに、自由が丘の青山ブックセンターが今月いっぱいで閉店になる。
一番気に入っていた本屋だったので、本当に残念だ。
http://www.aoyamabc.co.jp/45/45225/post_408.html
マンガにカバーをかけないというのは英断だと思う。立ち読みだけで終わってしまうこともあるけれど、買う時には、立ち読みをさせてもらっているこの本屋で買おうという気になる。
閉店が決まってから洋書一律50%オフセールが始まって、今はさらに追い込みがかかって70%オフになっている。いい本もたくさん残っているので、洋書を買いたい人にはチャンス。明日、31日が最終日。営業時間は21時まで。

今回のイギリス行きで、ものすごく楽しみにしていたのが「寝台車に乗る」というイベントだった。
以前にも、インドや中欧を夜行列車で移動したことはあったけれど、宿代を浮かすために夜を選んで移動したというだけで、座席に座っていたので、寝台車というのを使ったことはなかった。

乗ったのは、ロンドンのパディントン駅を23時45分に出て、翌朝8時にペンザンスに到着する「night sleeper riviera」。パディントンからペンザンスまでの運賃が片道80ポンド。寝台車料金が55ポンド。
寝台車は、チケット売場では購入出来ず、列車に乗ってその場で申込をしないといけないのだという。ロンドンに行く前、インターネットで寝台車を予約する方法がどうしても見つからなかったのだけれど、そもそも予約は出来ないようになっているらしい。

一つの車両につき、10部屋ほど。備え付けのベッドの他に、壁にも一つ収納されていて、二段ベッドに変形出来るようになっている。狭い部屋なのに、色々な機能が見事にコンパクトにまとまっていることに感動した。
部屋の作りといい間取りといい、「オリエント急行殺人事件」で出てきた列車の構造ととてもよく似ていて、小説の舞台の雰囲気がよく理解出来た。しかも、パディントン発というところも、アガサ・クリスティーづいていて、いい。

朝には、クロワッサンとイングリッシュティーを持ってきてくれるサービスがついていた。
振動が気になって眠れなかったりするだろうか、と心配していたけれど、パディントン駅を発車後5分で眠りにおち、そのままペンザンスに着く直前まで完全に寝ていた。

イギリスにはもう一つ、ロンドンのユーストン駅を23時50分に出発して、エディンバラに7時15分に到着する「Caledonian Sleeper」という寝台列車もあり、今回、こっちにも乗った。運賃は78ポンドで、寝台車料金は45ポンド。

ロンドンにいる間、St.John’s Woodにある杉原の家と、Hampsteadにある見市の家にお邪魔させてもらい、お世話になった。おかげで、イギリスに住むというのがどういう感じなのか、少し体感させてもらうことが出来た。

ロンドンは、Cityを中心に金融業に従事している人が多いので、リーマンショック以降の金融危機の影響もとても大きい。賞与カットはもちろん、突然職を失った人も少なくはなく、ロンドンから郊外に都落ちする人が急増していて、去年の秋から不動産価格は暴落しているのだという。
そのため、1年前まではとても借りることが出来なかったような高級住宅地のような場所でも、一般の人に手が届く範囲にまで価格が下がってきているらしい。

今回、自分にとってありがたかったのは円が高かったことだ。1ポンド約130円。一時期は260円の時もあったことを考えれば、円の価値は倍になったことになる。それでもあまり「物が安い!」という実感はない。むしろ今が普通、というぐらいの感じで、円安の時が異常な状態だった気がする。

ハロッズの周辺も、去年はアラブ系の人が多かったのが、今はめっきり数が減ってしまって、一時的にまた日本人の数が増えているという。原油高の極みにあった、たった一年前の時点から比べて考えれば、予想もつかなかったような変化の激しさだと思う。

港町プリマス。立ち寄る予定はまったくなかったのだけれど、車を走らせている途中で日が暮れてしまったので、一番近くの町であったプリマスに寄って一泊することにした。

プリマスというのは、新大陸に向けて旅立ったメイフラワー号が出港した歴史的な港で、当時の船着場と桟橋が残されている。
横浜の山下公園を巨大にしたような、きれいな芝生が広がる、とても気分のいい公園があった。


「Yard Arm」というパブに入ると、港町らしく、海の男らしき人々が集まっていて、ジョッキを片手にサッカー観戦に熱中していた。酒だけではなく、ホームメイドの料理がいろいろ。

港にも、海の男たちが集まる、スタンドバーのようなところがあった。コーヒーやココアのような飲み物と軽食を出していて、そこも、ちょっとした溜まり場のような交流スポットになっている。


シンプルなベーコンエッグバーガーに、好みの分だけケチャップとコショウをかける。
泊まったB&Bは、とても安い上に、無線LANも自由に使うことが出来て、便利ではあった。B&Bのシャワーは、水の出が悪いか、お湯が出ないか、のどちらかは覚悟しているのだけれど、その両方が重なるというのはちょっと気分が落ちる。

この街は、本当に美しかった。

海と丘と緑とが絶妙に配置されて、起伏に富んだ土地自体が、奇跡的なバランスを保って形づくられているということもあるし、街を見下ろす形で岩山の上に聳えるエディンバラ城の威容が、なんといっても素晴らしい。

瀬戸黒のような渋みをもった重厚感といい、切り立った崖の上に堅固に構えた安定感といい、城というのはかくあるべき、という鑑のような城だ。城に展示されている、即位の宝器として使われていたという王冠や宝剣も、目を瞠るばかりの見事さだった。

この城は外から眺めるとカッコいいのだけれど、中に入ってみると意外に小さく、こじんまりとしている。それでも、城から見た景色にはまた圧倒的な美しさがあって、エディンバラという街は、この類まれな景観そのものが一番の見所なのだと思う。

城の中にいたガイドの人たちは、タータン柄のキルトを着ていて、これはガイドの衣装(コスプレ)なのかと思っていたら、街中でも普通にキルトを着ている男の人をあちこちで見かけた。
エディンバラには滞在時間が短かったので、短時間で移動するために、駅前から出ていた、街中を一周するバスツアーに乗った。

このバスのチケットは24時間有効で、好きなタイミングで乗り降りが出来る。街中の主要な場所をまわってくれる上に、バスガイドが通り道の建物についての解説をしてくれるので、とても良い。

教会や墓地には、霧がよく似合う。
ランズ・エンドを含む、イギリス南西端のコーンウォール地方は、どこに行っても霧が立ち込めていた覚えがある。陽が射すわけでも、大雨が降るわけでもなく、かすかな霧を通した風景を眺めることが多かった。

家の門柱には、沖縄のシーサーのような、魔除けの石像らしいものが置かれている。ちょっと間の抜けた顔で、あまり頼りにならなそうだけれど、人外のものの侵入を監視するという意味では、オートロックなどより余程あてになるんだろうと思う。

コーンウォールの景色で一番気に入ったのは、山の中を歩いていた時に見つけた、名も知らぬ水道橋。由来も年代もわからないけれど、見た目ではだいぶ古いものな感じがする。

湿気が多いためなのか、山の中には苔の緑が多く、大昔に滅びた古代都市のような風情をただよわせていて、それがたまらなく良かった。

今回、イギリス南西部の小さい街をまわることが多かったので、電車よりも便利そうな、レンタカーを使うことにした。
ペンザンスで借りて、ロンドンで返すというプランだったのだけれど、ペンザンス駅の周りにはEuropCar一社しかなかったので、Hertzとか別の選択肢はなく、自動的にそこになった。
EuropCarの予約ホームページはかなりよく出来ていて、ほとんどのオーダーはホームページ上から完了してしまう。日本語のページは2日前までしか予約を受け付けていないので、その期限を越えた場合は、現地のページで直接申込をすることになる。
基本がマニュアル車なので、オートマ車の場合だいぶ選択肢は少なくなるけれど、一応何台かは用意されている。

とても役に立ったのはカーナビのシステムで、これがなかったら本当に、今回のように気まぐれに色々な街をまわることは不可能だっただろうと思う。というか、このカーナビ無しでは、どこか一つの街にたどり着くのにも大変な苦労をしたはずだ。
名前は「TomTom」というふざけた名前だけど、この小さい機械の中に、細かい農道のようなものまで含めてすべての道がインプットされていて、道を間違えたりしてもすぐに再検索してリルートしてくれる。目的地を入力した後は、カーナビが指示するとおりに進むだけで、目的の場所まで迷うことなく到着出来るし、到着予測時間の見積もりもかなり正確だ。
10ポンド程度でレンタルしたものだけれど、期待をはるかに上回るパフォーマンスを魅せてくれた。

ガソリンは、自分で入れるタイプのガソリンスタンドがほとんどだった。今回、日本から、シガーソケットの直流電源を100Vの交流電源に変換するインバーターを持っていった。世界共通規格なので、イギリスの車でも問題なく使える。といっても、これで便利になるのは、移動中に携帯の充電が出来るとか、その程度のことなのだけれど。

イギリス南西部に、ダートムーアという巨大な国立公園がある。広さ770k㎡で、東京23区の1.5倍あるというのだから、普通の公園とはスケールからして違う。

見渡す限りどこまでも広がる荒野で、「公園」ということからイメージされるような緑あふれる場所ではなく、ごつごつした岩肌とヒースが目だつ、なんともいえずユニークな場所だ。

とにかく変わった眺めで、荒涼とした大地の中に、羊や馬や奇岩があちこち点在している。天気が変わりやすく、晴れたかと思えば次の瞬間には霧雨が降ったり、あたり一面濃霧に包まれたり、その激しさも普通じゃない。

「危険地帯」というのがそこら中にあって、下手に足を踏み入れると抜け出せないような底なし沼も普通にあるらしい。
それでも、このダートムーアにいるとすごくワクワクしてくるのは、人の手で整備されていない自然に入り込むことが出来る場所だからだろう。まったく予想もつかなかった光景をみせてくれる、こういう場所は、日常からワープする遊び場としては申し分ないところだと思う。


これまでまわってきた、セント・マイケルズ・マウント、エデンプロジェクト、グラストンベリー、エーヴベリー、の4箇所の場所を見てみると、奇妙なことに気がつく。
それらの場所をつなぐと、キレイに、一本の線上に並んでいる。地図の縮尺が粗いからそう見える、というわけではなく、これらは実際に、ぴったりと同じ線上に乗っている。

自分が見てまわった場所が偶然、気づいたらそうだったというわけではなく、それは最初から知った上で、同じ線上にある場所をたずねていった。
古代の遺跡では、遺跡同士が同一の直線上に並んでいるということがよくあるらしく、特に、このセント・マイケルズ・マウントを起点とする線が指す方角は、5月1日(メーデー)の、日の出の方角にぴったりと重なっているのだという。
エデンプロジェクトの場合は、昔からあったものではないけれども、これは逆に、線上から適当な場所を見つけて、後から建設をおこなったパターンになる。

この線上には、他にも大小様々な数多くの古代遺跡があって、何故そういうことになっているか、大昔の人がどうしてその線を知ることが出来たのかはよくわからない。
今回の旅は、この一本の線を辿っていく旅でもあった。
