栗本薫氏を悼んで

作家の栗本薫氏が亡くなった。

もう、「グイン・サーガ」の続きが出ることがないというのは、残念きわまりないことだけれど、最も無念だったのは、死の直前まで作品をひたすらに書き続けながら、ついに完結まで手が届かなかった、著者本人だろうと思う。

池田晶子氏の時にも同じことを感じたけれど、その作品をとても好きだった、まだ現役で執筆中の作家の訃報というのは、体の一部を失ったような悲しさを感じる。

信じられないほどのペースで膨大な量の作品を書き残した、栗本薫という人は、文章を書き続けずには一日たりとも生きることが出来ないような、本当の意味での生来の作家だったのだろう。

そういう魂が、文章を綴るべき依り代としての体を失ってしまったということが、本当に惜しい。