夕暮れ時の、陽が沈む直前の数分間というのは、一番景色が美しく見える瞬間だと思う。
しかし、毎日それが見れるというわけではなく、天候も、ロケーションも、空気の状態も、光線の射し方も万全の条件が重なった時にだけ、信じられないほど荘厳な景色が現れる。
黄昏という言葉は、暗くなりはじめて、他の人の顔が見えなくなった時分に「誰ぞ彼(たぞかれ)?」とつぶやいたところから生まれたのだという。
日没の刻には、普段見えていたものが見えなくなり、見えなかったものが見えるようで、見慣れた街でもまったく姿を変えてしまう。
現世と幽界の距離が最も近づく「逢魔が時」の中にいると、その瞬間だけは時間が止まっているような気持になる。
上の写真は、初台の村田マンションの屋上から撮った。
夕暮れからも雑居ビルからも、同じ種類のノスタルジーを感じる。
東京の夕暮れは、自分にとっては世界で一番、心を揺さぶる景色だ。