アメリカ50州を読む地図(浅井信雄/新潮社)
アメリカにある50の州の特徴を全部、アルファベット順に紹介していっている本。各州ごとの説明は平均6ページ程度でまとめられていて、おおまかにその州のことを理解するには丁度いい分量になっている。
アメリカも、ニューヨークとかロサンゼルスとかのことなら、色んな情報が入ってくるけれども、真ん中のほうとか、田舎のほうの州になるとさっぱりどういうところだかわからない。それらを分け隔てなく、どこの州についてもきちんと解説してくれているというのは面白い。
今まで名前を聞いたことのないような場所ほど、斬新な話しが多くて楽しめた。本が出版されたのはクリントン政権下の時代なので、今となっては若干古い記述もあるけれど、タイムリーな話題はあまり含まれていないので、ほとんどの内容は現在でも影響ない。アメリカという国の途方もない国土の広さと、地域によってまったく異なる多文化性をあらためて実感させられる本だった。
【名言】
キーウエストの最南端の碑には「ハバナ(キューバの首都)まで90マイル」ともある。車で走れば一時間余りで行ける距離だ。(フロリダ州)(p.64)
シカゴを抱えるのはイリノイ州だが、州都は大都会シカゴではなく、スプリングフィールドである。中部州の特徴は、社会的変化を先取りする西海岸や、政治変動の先端をゆく東海岸から隔絶されて、ゆっくり変化するか、または変化を拒む保守傾向が強いことだ。(イリノイ州)(p.87)
ミシシッピ川とミズーリ川に挟まれた典型的な農業州である。米国のA級土壌(最も肥沃)の四分の一はアイオワ州に集中し、州の土地の95%以上は農業に利用されている。(アイオワ州)(p.99)
ベセスダは高級官僚のベッドタウンである。一帯は地下鉄やバスといった大衆交通路線から離れ、だから犯罪に走りそうな貧困層は近寄りがたく、ゆえに不動産価格の高い、全米有数の高級住宅地とされている。(メリーランド州)(p.131)
ミシシッピ州の特性は、貧困と人種差別であり、マイナス・イメージが強い。歴史もまた貧困と人種差別にいろどられている。南北戦争の主戦場となってひどい戦禍を受けて以来、全米でも最も貧しい州となり、その状態は今日も続いている。(ミシシッピ州)(p.153)
不夜城はカジノだけでなく、夜間も門を閉ざさない結婚式用の教会もあちらこちらにあり、結婚目的のカップルが全米から集まってくる。費用は数十ドルから数百ドルで、結婚産業の言葉も使われる。離婚の手続きも簡単で、これもビジネスになる。結婚率も離婚率も全米平均を上回る年が多い。(ネバダ州)(p.178)
州南端サンランドパークの東を流れるリオグランデ川はメキシコとの国境だが、幅10メートルほどしかないため、金網を破っての密入国者があとを絶たない。潜入に成功すれば、どんな働き口でも米国の法が保障する最低時給にありつけるが、その額はメキシコでの日給にほぼ相当するから、魅力的な求職越境といえる。(ニューメキシコ州)(p.197)
オランダは、オルバニイ付近に最初に建設された植民地にニューネザーランドと命名、いまの州域一帯に支配をひろげた。1626年、オランダはマンハッタンを住民のインディアンから買い取りニューアムステルダムと名どけた。伝説では買値は24ドルとも40ドルともいわれる。(ニューヨーク州)(p.202)
ユタ州の保守的風土はモルモンという宗教を除いて語れない。州人口の約70%もしめ、独自の生活や信仰を守ろうとする彼らの努力が、どうしても保守につながるのである。(ユタ州)(p.274)