岳 6 (6) (ビッグコミックス)
岳(石塚真一/小学館)

※2008年1月現在、6巻まで発売中。
異色のマンガといっていい。
日本アルプスを舞台にした、一見さわやかな山岳系のストーリーに見えるのだけれど、かなり意外なほうに読者を持っていく。
話しの中で、びっくりするぐらいたくさんの人が山で死んでいきながら、それでいて主人公だけは爽やかに、険しい山での救助活動を淡々とこなす。「なんだこれは?」という違和感を、最初は感じる。
これを読むと、山に登ったことがある人もない人も、一様に山というものがとても怖い存在に思えてしまうだろうと思う。二度と山に登らないようにしようと思う人もいるに違いない。しかし、それでいいのだと思う。
多くの雑誌やメディアが、山の明るい健康的な面しか語らない一方で、こういう作品の存在は必要だ。実際、山は人の想像を超える大きな魅力を持ちながら、それに釣り合う分だけの大きな危険を裏側に持っているものだと思う。
山の素晴らしい部分だけを得ながら、リスクは取らないというのはムリな話しなのだ。そのことを主人公はよく知っているから、山で遭難した人に対しても、その行為を咎めることなく、「よく頑張った」と声をかけることが出来る。
自然の雄大さをそのままに語った、スケールの大きな作品だ。