死―宮崎学写真集


死―宮崎学写真集(宮崎学/平凡社)

森の中で、動物の死体が自然に還っていく様子を定点観測した、かなり変わったテーマの写真集。
この写真集を見ていると、自然が、動物の体を一片の無駄もなく、再利用し尽くす様子がよくわかる。脇には簡単なコメントしか添えられていないのだけれども、写真そのものが、驚くべき自然の働きを雄弁に語っている。
筆者もあとがきで書いていることだけれど、動物の死んだ姿というのは、自然の中ではあまり目にすることがない。死んだ瞬間から発する死臭を嗅ぎつけて、様々な生き物や微生物がよってたかって、徹底的に分解してしまうからだ。
ハエ、ウジ、たぬき、小鳥、テン、などが、腐敗の度合いに応じて獲物に集まってきて、資源の再分配者として、それぞれの役割を果たしていく。
シンプルだけれど、とても考えさせられることの多い、意義のある写真集だと思う。
【名言】
シカの体毛の大部分が小鳥たちの巣材となり、残りはバクテリアが分解してしまった。ここに死体があった痕跡は、もうどこにも見あたらない。(p.59)
シデムシという昆虫がいる。漢字では、「埋葬虫」「死出虫」と書く。字が示すように、死体にたかる虫である。このシデムシは、ハエと同時に死体にやってくる。それも、腐敗が始まるころからやってくるのだから、驚くべき能力で死臭を嗅ぎわけられるらしい。
ところが、シデムシは死体が非常に新しいうちには現れない。腐って腐敗臭が漂いはじめないと、出現しない。このように腐敗の段階に応じて登場してくる生物がることは、死体処理にとても重要な役目を担っているのだろう。(p.80)
<自然の死>を見つめて気づいたのだが、私たち人間の死は、<物質的に終息する死>が多くなっているように思えてならない。私の家でも、私の祖母は土葬であった。しかし、そのころを最後に私のまわりでも、土葬の習慣はなくなってしまった。すべては火葬なのである。(p.82)

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