魂萌え!

魂萌え !
魂萌え !
(桐野夏生/毎日新聞社)
【コメント】
60歳を目前にして、夫に先立たれた未亡人が主人公という、ちょっと変わった設定の小説。60歳近くなった時の生活ということになると普段なかなか想像しにくいけれども、当然ながら何歳になっても悩みは尽きることはないだろうし、体力が衰えたり病気がちになったりということもあるし、より悩みも情熱も深くなっていくものかもしれないとも思う。
世の中の雑誌やトレンドは、若い世代ばかりにスポットをあてているから、老年の生活について考える機会はあまりないけれど、年をとってから起こる家族の問題や、遺産の問題、人間関係の変化など、誰の身にもやがては訪れるのだということがリアルに感じられる話しだった。
桐野夏生にしては、あまり異色な部分はなく落ち着いた感じ。その分、タイトルと表紙のセンスに異色さが出ている。
【名言】
自分の未来はあと二十年。それも、老いや病気が待っている暗いものだ。夫もいない自分が頼るのはお金と健康だけなのだ。この実感は、若い者とはどうしても共有できない。(p.170)