鎌倉の闇


(高田崇史/講談社)

衝撃的な本だった。
授業で習った内容が鎌倉時代の表の歴史だとすれば、ここで語られているのは、公には明かされることのなかった裏の歴史。今までに聞いたことがない、驚くべき解説ばかりが、たて続けに登場する。
もともと、鎌倉という場所は今よりももっと海岸線が陸地の側に迫っていて、湿地帯のようなじめじめとした土地だったのだという。三方を山に囲まれて、守りやすいという理由で、この場所に幕府が開かれたというのが通説だけれど、そういう理由で作られた都は、この鎌倉以外には無い。
交通も不便で、日当たりも悪く湿気も多いこの場所には、無数の処刑場や墓場や、河原者が集まる、あまり都向きのところではなかったようだ。そこに鎌倉という都が出来上がるに至った、歴史がこの本では語られている。
一応、鎌倉で起こった事件と絡めてミステリー小説仕立てにはなっているのだけれど、それは本編とはほとんど関係なくて、無視してもいい程度の内容になっている。
鶴岡八幡宮や、銭洗弁天、長谷寺、佐助稲荷、江ノ島など、主要な場所はもちろん、それ以外の細かな寺まであちこち解説がされているので、概略については網羅されたガイドブックのような感じがある。鎌倉に行く前に、普通の旅行ガイドとあわせて読んでおくと、鎌倉を二倍楽しむことが出来るようになると思う。