流星の絆(東野圭吾/講談社)
見事だなあと思う。
東野圭吾という作家は、これだけ多作でありながら、一つ一つの作品にムラがなく、必ず一定以上のクオリティーを保ちながら仕上げているという印象がある。
この本も、そういう作品だった。よく練られたストーリーと人物設定。的確に散りばめられた伏線と、その種明かし。非常に基本に忠実というか、読者をひきつけるためのツボをきちんとおさえた、丁寧な書き方。
次々と新曲を出しながらも、いずれもヒットチャートの上位にランクインさせていた、全盛期の小室哲哉氏の曲作りを彷彿させる。
おそらく、この作品もそのうちドラマ化されることになるんだろう。
ただ、この本からは一箇所も、「名言」と思うような文章は引用出来なかった。上手な文章なのだけれど、心に残るようなセリフや言葉は、フックにひっかかってこなかった。きれいにまとまりすぎてしまっているから、ということもある。
つまらない作品かというと、全然そんなことはない。この著者の本で、つまらないと思ったものは今まで一つもない。これはかなりスゴいことだ。どんなに好きな作家であっても、たいていその中にはドンピシャにハマるものもあれば、まったく面白くないと思う本も、両方あるのが普通なのだから。
そういう中にあって、東野圭吾氏の書くものは、たとえ波長が合わない時でも、ひどい失望を感じるようなことはないという意味で、やはり達人レベルの書き手なのだと思う。