さくらの唄 上下巻(安達哲/講談社)
上巻と下巻で、まったく別物といっていいぐらいに違う話しになる。
上巻は、青春時代特有の切ない感じが思いっきり出ていて、かなり文学的でセンチメンタルな色合いに満ちている。
それが、途中からは極端に逆に振れて、どんどんカオティックな様相を示してくるという、誰にも(おそらく作者自身にも)先の展開がまったくわからなかったんじゃないだろうか。
最終的にはキレイに収束するので、全体から俯瞰してみれば、はっきりとした起承転結があって、見事な構成の作品だと思う。
【名言】
原発がみえる。オレたちゃまるで砂つぶだ。
愛だな。愛をつかんだやつぁいちばんえらい。(p.38)
城がこわれるのをオレは笑いながら見ていた。
オレが甘かったと思いながら見ていた。
りっぱな城を作るには、人に指図できる力を持つか、
でなきゃ、誰にも見られないところでそっと作ることだ。(p.73)