正論。(みうらじゅん対談集)


正論。(みうらじゅん/コアマガジン)

みうらじゅんの対談集。
本人が自称「サブカルのチンギス・ハーン」というくらいなので、対談相手もサブカル系の人が多く、どれをとっても、ダルい感じがいい。
面白さの引き出し方が絶妙で、最高に笑った会話がいくつもあり、たいがいの相手が、まともな話しをしようとしていないという意気込みがものすごく良かった。一冊の中に30人分ぐらいの対談掲載されていて、内容的にもとても充実している。
特に良かった対談は、
・安齋肇
・喜国雅彦
・しりあがり寿
・カーツさとう
・南伸坊
【名言】
みうら:体育会系は「パンを買わせに行く人」でしょ?文化系は「買いに行く人」でしょ?そこに「見てる人」ってのもいて、それが美術系だったんだよね。(p.21)
みうら:水木先生って、自分のことを「水木さんはさあ」って呼ぶじゃん。それは「矢沢はさあ」っていうのと同じ世界でしょ。もはや自分を語る時、第三者の目を借りてるんだよね。いつかその域に行けるよ。自分から「根本さんはさあ」って言えれば行けるよ。(p.82)
ROLLY:充電しなければいけないくらいだったら、表現者としてはちょっと違うんじゃないかなって。よくお笑いの人とかが、この間こんな可笑しいことがあったって話するじゃないですか。それってお笑いの人だから面白い話とか凄い話に出会うのかと思ってたんですけど、違うんですよ。本当は何処にでも可笑しな話は転がってるんです。それにちゃんと気づくかどうかの違いだと思うんですよね。(p.97)
みうら:俺、いつか東京が大停電になると思うんだ、俺の予想だけど。パソコンって弱いでしょ?停電と水。大洪水。これ、弱いよ。号外出さなきゃいけないでしょ。紙で。かわら版みたいなやつ。で、「どうする?」って言った時に、「あ、手書き原稿はあいつだ」ってなるじゃん!絶対来るでしょ?あとね、今パソコンで色付けたりしてるじゃん。そんなヤツ駄目だよ。(p.119)
喜国:最高の一枚がある人はもう止めてるよね。芥川龍之介のあれじゃないけど。
みうら:っていうか、「芥川のあれ」は他に写真ないだろう?坂本龍馬とあの人は、絶対あの写真でしょ(笑)。(p.148)
みうら:いつもむちゃくちゃだよ泉さん!ホントに。何で第三者的な目もあってコラムを書いてる人間が、あそこまで自分がなくなるんですか?(笑)そこ、世間には明かされてないところですよね。(p。168)
久住:昔の科学ってどこか暗いよね。あれはいいよね。
みうら:「弥生に対して縄文をぶつけた」みたいな感じだったよ。万博全般は近代的なんだけど、太陽の塔には葉脈とかあってさ、縄文な感じなんだよ。初めて芸術みたいなものを感じた瞬間だよね。(p.191)
みうら:でも、もう一回だけリバーシブルの人生があってさ。「ホモになる」ってのが一個だけ残ってない?
寿:「ホモ」ですか!みうらさんがそうやって何かにスポットライト当てる時って凄いよね。写経とか仏像とか。いろんなものを次から次へと。今度は「ホモ」ですか(笑)。(p.201)
みうら:この間名古屋行って「ひつまぶし」って書いてあるのがさ、「ひまつぶし」に見えてさ。そんなことだけなんだよね、俺にとって重要なことって。「ガンバロー」って書いてあったのがたまたま「バンガロー」に読めたとか、そこだけの発想でやってきたるから、やっぱどこか不安なんだよね。そんなの絶対不安じゃないですか?(p.205)
みうら:どうなの?
松久:その「どうなの?」って何なんですか(笑)。僕が悩みをみうらさんに相談するんですか?
みうら:はい。「自分はこう思ってる」「死生観はこうだ」とか、聞かれてもいないようなことをどんどん話してみてください。(p.212)
RYO:外人になりたいとは思いますね。
みうら:なりたいでしょ!でもなれないでしょ。俺、中3の時デビッド・ボウイの写真持って床屋行って、「同じ髪型にしてくれ」って言ったら「ならないですね」ってハッキリ言われた時凄いショックで。憧れても外人はどうやらなれないみたいですね。(p.227)
みうら:俺もたまたまローソンに買い物行ったらB’z流れてたの。で、何か「脳細胞にたたき込め~!」ってフレーズ何回も言うんだ。「脳細胞にたたき込め」ってものスゲエなと思って。そんなんがめちゃくちゃに流行ってるわけでしょ。そこがまた凄いと思って。流行ってないんだったら分かるけど。俺、遅れてるって思った。
高木:俺も昨日びっくりしたんですよ。で、あの高音ねじれボーカル?ニューウェーブっぽかったんですよ。
みうら:ああ~。だって稲葉さん俺と同じ歳くらいだよ。いや凄いよ、半ズボン穿いてたよ。俺はもうなかなか人前では穿かないもん。(p.237)
みうら:実は般若心経って昔から凄くジョン・レノンの「イマジン」に似てるなって思ってた。
はな:え?そうなの?
みうら:「イマジン」は「国境は無い、天国も無い」って言うでしょ?般若心経も「無い、無い」だから。「色も無い、形も無い」っていうことだから。多分ジョンが釈迦の教えをパクッたとみたね。(p.318)
南:オレ、もう60過ぎて思うんだけど、結局、子供の頃に面白かったことっていうのが、その人が一生やっていくことなんだと思うんだ。つくづく。みうらさんの仏像とか、もの凄く露骨にそうだよね。
みうら:あ、あの・・みうら「君」でお願いします(笑)。
南:ああそうだ(笑)。み、みうら君。
みうら:行きました。二宮金次郎が単に座ってるやつも見ました。
南:そうそういろんなのがあるんだ。
みうら:あれって休んでるだけなんですよね。立って本読んでるから「偉い!」と思ってたけど、休んで本を読んでるやつ、単なる休んでる像ですから。ヤバイですよ。(p.340)
山口:俺の後輩で「お父さんが亡くなった」っていう人がいてね。いや、すごい悲しいことだなあって思ってたんだけど、「親父の戒名自分でつけたんですよ」って言ってて、「何てつけたの?」って聞いたら、「四番サードってつけました」って。
みうら:よく分かんないけど、それ偉いですね。
山口:だからなんていうか、みうらじゅんっていう人がいると、ちょっと安心するっていうのはありますよね。(p.362)