宇宙兄弟(小山宙哉/講談社)
※2010年6月現在、9巻まで発売中
宇宙飛行士という特殊な職業をテーマにしていながら、奇抜な設定を用いずに、リアリティのある職業の一つとして描いているというのがいい。
ストーリー重視の作品で、話しの中に山場がいくつもあって、とにかく先が気になってしまう。そのまま脚本として映画化出来てしまいそうなくらいに、よく作りこまれた物語だと思う。
作り込み方が丁寧な感じで、かなり笑えるし、泣ける。笑いのテイストが、ハロルド作石の「BECK」にちょっと似ていると思った。
近未来という設定なこともあり、どこまでが実際にJAXAやNASAの宇宙飛行士の選抜や訓練でおこなわれていることなのかは、よくわからないけれど、未知の世界が舞台になっているというのは、それだけで面白い。
表紙のカバーに施されている、キラキラしたラメの細工が好き。
【名言】
こ・・この人・・
一人なのにちゃんと「ごちそうさま」を言っている
なんて幸せそうにお昼を食す人だ(1巻p.108)
あのさ・・
今と昔で違うもんがあるとすりゃ
それはムッちゃんが・・昔みたいに張り合わなくなったってことだ。(1巻p.220)
死ぬのは嫌だが、死ぬまでに宇宙に行けないってのは、もっと嫌だ。(3巻p.57)
たとえば・・「白いジグソーパズルを完成させた時の気持ち」なんてどこにも載ってないだろ。
誰かに聞いたとしても、それで知ったことにはならない。(4巻p.139)
この5人はまあ・・アレだ
みんなジャンケンみたいなもんだ
グーみたいな奴がいて
チョキみたいな奴もいて
パーみたいな奴もいる(5巻p.19)
私がここでどう過ごすかは最初から決めていてはずだ
弟を応援してやること
それが私の仕事だ(5巻p.220)
「じゃあ南波君・・君から見て
一番宇宙飛行士にふさわしいと思うのは誰だ?」
「一番ふさわしいと思うのはケンジです
でも一番なってほしいと願うのは・・せりかさん
ところが実は、一番なりたがってるのは・・俺です」(6巻p.57)
私はもちろん
日々人のことを誇りに思っている
自分のことのように嬉しい
そう思える自分がいる
だが、私のなかのもう半分では
未だにウジウジと、優れた弟に対するジェラシー菌が充満してやがる
どっちつかずで情けねぇ
「誇り」と「嫉妬」が5:5だ
これじゃまるで、今日の天気じゃねーか(6巻p.172)
日々人が月に降りた時
私の顔は笑っているだろうか
それとも泣いているだろうか
それがどっちか、今わかった
両方だ(7巻p.131)
「ちょ・・ちょっと血も出てるけど・・つ~っ
とりあえずOK・・!」
「ねぇムッちゃん・・
あんたって・・バカなの?」(8巻p.34)