青少年のための江口寿史入門(江口寿史/角川書店)
この本は、過去に発表された短編の中でも良いものを集めた、作者自身の自選によるベスト本という位置づけになっている。どれも、天才的なセンスを感じさせる作品ばかりで、かなり面白い。
江口寿史氏のマンガは、連載ものの場合、回が進むにつれてだんだん粗くなって、内容が薄くなってくることが多いので、面白さの本領が本当に発揮されるのは、短編という形式なのだろうと思う。
特に、「岡本綾」という短編は、この本が初出の作品で、最高に良かった。
老人から始まって、時間とともにだんだんと若返っていくという設定は、映画「ベンジャミン・バトン」と同じだけれど、数ページの話しでありながらも、こちらのほうが深い余韻を残した。
タイトルの通り、江口寿史氏の作品をまだ読んだことがないという場合、この短編集から読み始めるのが、一番入りやすいのではないかと思う
【名言】
「ホラ匂うだろ金木犀」
「あ、このニオイ?キンモクセイ・・」
「死んでいくのに心残りはもうないけど、この匂いがかげなくなるのは・・名残惜しいねえ・・」
「・・なに年寄りみたいなコト言ってんだよ・・(あ・・年寄りなのか)」
(p.40)