7SEEDS(田村由美/小学館)
※2010年6月現在、17巻まで発売中
読んだもの皆ハマるという、伝説の「7SEEDS」。
出だしのほうは、設定がしばらくわからないので、なかなかその魅力が伝わりにくい感じがあるものの、全貌がだんだんと明らかになるにつれて、物語の壮大なスケールが実感出来るようになってくる。
その意味で、1~3巻はプロローグ的な位置づけで、登場する夏のBチーム、春のチームは、主役級のキャラクターがいることもあって、一番標準的なチームな感じがする。
まだ、世界観を着々と小出しにしている段階なので、あまり派手な動きはないけれど、その、プロローグ部分ですら、かなり個性的なキャラクターが揃っていて、何が起こるかまったく予想がつかない面白さがある。
冬のチームと秋のチームが登場する4~6巻では、それまでに登場したチームとはまったく異なる展開が待っていて、いよいよ本格的に面白くなってくる。
各チームに所属するメンバー7人の化学反応によって、チームの性格も変わってくるという、人間関係の妙のようなものが見え始めてくるのがこのあたりからで、これだけ登場人物が増えても、それぞれのキャラの描き分けがきっちりと出来ているからこそ生まれてくるドラマがある。
「7SEEDS」が本当にスゴくなってくるのは、7~9巻でついに登場する「夏のAチーム」のエピソードからなんじゃないだろうか。
それまでの話しというのは、物語が本格的に始まるための準備段階で、いよいよ、役者が出揃ったところから、本領に踏み入ったような感じがある。
今までとは時代も、物語の展開の仕方も違い、一つのチームが誕生するまでの成り立ちを、長い時間をかけて追うような形になっている。
それだけに、一人一人のキャラがよくわかるようになっているし、しかも全編の雰囲気がやたらとダークで、「ここまでやるか」と思わせる内容ばかり。始めからクライマックスまで、ノンストップでとにかく濃い章だ。
ちょっと外伝的な趣の10~11巻を挟み、12~13巻では、いよいよ、すべてのチーム同士が互いに遭遇し合い、何が起こるのかまったく予想がつかない展開に突入。
ミクロなスケールでの「文明の衝突」によって、助け合いの協力関係が生まれることも、殺し合いに至る敵対関係が生まれることもあるというのは、人間社会の縮図を見ているような気分になる。
そして、予想を遙かに超える展開が待っている14~17巻。
「ここまでやるか!」の連続で、とにかく驚かされる。この後いったいどうなっていくのか、気になりすぎて発売を待つのがツラい。
【名言】
皮肉だねえ。今や1枚のディスクに収まってる百科事典を、結局、紙で残すしかなかったんだ。(4巻p.35)
ああ、僕はもうすぐ死ぬんだな。
だからこんなに、綺麗なものが見られるんだ。(4巻p.143)
ずっと、人がいないのは怖かった。
でも人がいるのはもっと怖い。
あんなに誰かに会いたかったはずなのに。(5巻p.36)
同じ環境で育ったものは、一つの原因で死滅する恐れがある
それに全体の中の一部が優秀ってのがバランスいいんだよ
・・まあその場合
「死神」をどこかに一人入れるべきだと思ってる(7巻p.95)
不吉な気がしたなら
わたらないという選択肢もありえたんだ!
それが自分で考えるってことだろ!(8巻p.34)
花、この世にあるものはすべてキレイで
すべて怖いんだよ(9巻p.145)
できるな?
最後の最後まで君は嘘がつけるだろう?(10巻p.180)
人類は優秀だと自負しているが
たとえば全生物でオリンピックを開いたら
一体どの種目で1位を獲れる?(11巻p.50)
あの一瞬・・
くるみさんを流星がかばい
その前にあの二人が出て脇を刈田さんが固めた
更にその前に十六夜さんが・・
それが秋のチームの本当の姿だ(12巻p.34)
これは本当なら警察を呼ぶ話だ
でも、もうできない
これからずっと犯罪が起こっても
人殺しが銃を持ってウロウロしてても
誰も助けてくれないんだ(13巻p.139)
本当に死んだのかよ
いろいろ一緒に乗り越えてきたじゃんかよ
ずぶといのに、ずうずうしいのに、
ずいぶんあっさり行くんだな(16巻p.128)