人は何を遺せるのか


人は何を遺せるのか(中野孝次/日本経済新聞出版社)

人が死んだ後にはいったい何を遺すことが出来るのか?ということをテーマに、中野孝次氏が考察した本。表紙の絵がいい。
「勲章」「金」「家」など、一般的なものについての言及から始まって、「手紙」「臓器」「コレクション」へと話しは進み、更に、「芸と技」「梅干し」など、有形無形の様々なものを遺した生き方について、それぞれ評価をおこなっている。
途中からは、一般的な話題から離れて、筆者個人に特に関わりのあった方が遺したものや、特定の偉人の遺したものについて取り上げられていて、それがとても興味深い。
賢人が書き記した、死生観についてのメモや書物を引用しつつ話しを進めているので、そこから、気に留まった人について、より深く知っていくための入口として読むのが一番面白いと思う。
主張としては、内村鑑三著の「後世への最大遺物」と似たものになっていて、人が遺せる最も大きな遺物は、金や名誉ではなく、人間性や生き様である、という結論にまとまっている。
しかし、その結論に至るまでの話しが、より、実際の生活に近いたとえが多く、現代的でもあるので、自分自身が考える時の参考になる話題は多かった。
【名言】
以上、人が死後遺せそうなものについてあれこれ検討してみたが、結局最もたしかに後世に遺せるものは人間性である、ということが判明した。それ以外のものは、伝えても空しいか、早晩失われるか、いずれは消滅する。ただ一つ、これだけは後世に伝える価値のあるのは、人間の生涯そのものであった。(p.205)
ソーシャルブックシェルフ「リーブル」の読書日記