日本以外全部沈没(筒井康隆/角川書店)
小松左京の「日本沈没」のパロディーとして書かれた作品で、世界中の要人が日本に集まってくる話し。昭和40年代に書かれたものなので、登場人物はすべて、その当時に活躍していた人ばかりで、2008年現在も存命中の人は数えるほどしかいない。
マンガで、コマーシャルなどの時事ネタを入れているものを見ると、「これは数年後に見た人はさっぱり意味がわからないだろう」と思うのだけれど、敢えてそういうネタだけで構成した、挑戦的な作品といえる。
外国人は、日本の限られた領土に入れてもらう立場なので、非常に肩身が狭い。
必死に日本語を覚えて順応しようとする様が、とても滑稽に描かれているけれど、これは、国際社会になんとか取り入ろうとする日本の姿を、逆の立場から風刺したものなのだろう。
アラン・ドロンが高円寺のスナックでボーイをしていたり、エリザベス・テイラーが裏通りで客引きをしていたり、本人が知ったらいったいどう思うのかと思うけれど、当時の読者は、世界のスターが庶民的な生活をする姿を見て、溜飲を下げたのかもしれない。これを読んで、団塊の世代の人々は当時を懐かしむだろうし、それより若い世代は、当時の雰囲気を知ることが出来る。
巻末には、登場人物についての解説がついていて、簡単な「昭和40年代史」の勉強にもなる。今、この作品が、あらためて現代に時間を移してリライトされるとしたら、どんな人物が登場してどんな描かれ方をするか、とても興味がある。