ソフトウェアの匠


ソフトウェアの匠(まつもとゆきひろ/日経BP社)

「日経バイト」に連載されていた記事をまとめた本。
かなり専門的な記事が多いので、まったく興味をもてない分野の話しも多かったのだけれど、一番最初の、まつもとゆきひろ氏が書いた「プログラミング言語論」はかなり面白かった。Rubyの話しだけではなく、プログラミング言語全体の進化の歴史がわかりやすく説明されている。
雑誌の連載から抜き出したものなので、トピックとしてはあちこち分散してるが、羽生田栄一氏のオブジェクト指向についての解説は、かなり紙数をとって説明がされていて、入門書としてとても良い。
その他の記事は、デザイン・パターン論やBIOS開発論など、システム開発に関わる各論が並んでいるのだけれど、論文調で堅い内容が多いのと、あまりに専門的すぎるので、直接参考になるような話しはあまり見当たらなかった。
【名言】
コンピュータ好きの中には物事の裏側の仕組みに興味を持つタイプの人間が多いような気がします。子供のときに時計を分解して仕組みを確かめようとしたタイプですね。たいてい元に戻せなくなってしまうのですが。私もそうなんですが、そのようなタイプはコンピュータを使っていても、それを走らせるソフトウェアの仕組みに興味を感じて、ひいてはソフトウェアを作る側に回ることになります。
中には、それだけではあきたらず、ただソフトウェアを作るだけではなく、ソフトウェアを作るためのソフトウェアに手を染めたりと、どんどん仕組みの奥底の方に潜っていく人たちがいます。そういう人たちはどんどん潜っていって自分のバランスのちょうどいいところで留まるんですが、私の見るところ、その究極の行き先はハードウェアかOSか、プログラミング言語のいずれかのようです。(p.10)
ここ半世紀の間コンピュータの性能は飛躍的に向上しましたが、人間の脳の処理能力は少しも変化しません。生物はそんなに簡単には変化しないのです。その意味では人間の処理能力がプログラミングの限界となっているのです。構造化プログラミングもオブジェクト指向プログラミングも、コンピュータの助けを借りて人間の処理能力の限界を拡張しようという試みと言えます。(p.24)