天才がどんどん生まれてくる組織


天才がどんどん生まれてくる組織(齋藤孝/新潮社)

この本は、白戸三平の「サスケ」に出てくる猿飛佐助とは何者か?という問いからスタートする。猿飛というのは、個人につけられた固有名詞ではなく、「猿飛佐助」として必要な技を修得した人々につけられた名称だった。
誰か一人の突出した能力に依存せずに、複数の人間がお互いを補い合い、常に一定の能力がある存在が欠けないような仕組みを持った組織は非常に強い。本著は、「天才とは何か?」という点にフォーカスしたのではなく、「天才が生まれる組織とは何か?」ということに注目をしている。
突出した才能というのは、同じ場所や、同じ時期に集中することが多い。
それは、日本の戦国時代や明治維新の時に、雲のように人材が湧き出たことを見てもそういう感じがするし、藤子不二雄や石森章太郎などの発祥であるトキワ荘のような場所があったことを考えれば、確かに、そこには才能の発露を誘発する要素があるのだろうと思う。そのメカニズムについて、徹底的に考察を進めているのが、この本だ。
藩校、宝塚音楽学校、清水FC、週刊少年ジャンプ、など、実際に数々の優れた才能を輩出した組織について、それぞれのやり方を詳しく説明しているところが、とても面白い。
この本を読んだからといって、では自分が「天才が生まれる組織」が作れるようになるかというと、そういう感じは全然しなかったのだけれど、確かに、才能が育ちやすい場というのは存在するし、「開花した意識」というものが連鎖しやすいものなのだということは、とてもよく理解が出来た。
【名言】
私は体育こそ、書くことの意味が明確になる教科だと考えている。暗黙知や経験知が大きなパーセンテージを占める領域でこそ、書くという行為が効果を発揮する。なんとなくやっていることをしっかりと言語化して捉えなおすという意識の働きこそが、天才の武器である。天才は、意識が混濁しているどころか、実に鮮明である。自分の課題がクリアに見えていて、その課題を拡大して反復練習をする。(p.104)