マイクロソフト・ウェイ(ランダル・E.ストロス/ソフトバンククリエイティブ)
マイクロソフトがいかに成功し、その陰でいかに多くの失敗をしてきたか、について、マイクロソフトの「一部の超優秀な人材を極端なまでに優先する」という独特の企業文化を軸にして分析をした本。
マイクロソフトというのは、とかく世論や世間的なイメージが先行して、偏った見方をされがちな企業だけれども、この本は、かなり中立な立場から、客観的にマイクロソフトという会社のエッセンスを取り出している本だと思う。
出版が1997年ということで、本の中には「google」についての記述は、影も形も見当たらない。だからこそ、この本はとても絶妙なタイミングで出された本だと、今では思える。
googleが台頭した後だったら、そのことによる余計なノイズが入って、正確にマイクロソフトという会社のみを取り出して評価することは難しかっただろうし、そもそもマイクロソフトについて書いたということの注目度も、世間的にはかなり下がってしまっていただろう。
今の時代に適したものかどうかはわからないけれども、ビル・ゲイツがマイクロソフトにおいてとってきた経営手法は、かなりオリジナルなものがあって、そこから学べる内容も多い。この本が出版された後の10年間の遷移も含めて、今ではさらに、その成功と失敗についてより多くの事例を併せて俯瞰することが出来る。
この本は、現在においても、充分に一読に値する内容だと思う。
【名言】
知性至上主義の裏に潜む反平等主義を目の敵にする人々にとっては、ゲイツは悪魔のような存在だ。しかし、マイクロソフトと関わりのないプログラマーも、いろいろな理由でマイクロソフトを憎悪する人々も、ゲイツやマイクロソフトの人間がいっているのと同じことをどこかで耳にしているはずである。「最高のプログラマーと単によいプログラマーとの差は小さくない」。概念の独創性、コーディングの速度、設計のうまさ、問題解決能力など、どのような点においても、最高のプログラマーのほうが数段上をいっている。いくつかの会社が同じスタートラインに立ったとしても、このようなスーパー・プログラマーを一番多く集めた会社が最後に勝利をつかむことは、だれの目にも明らかだろう。(p.65)
ゲイツは、優秀なプログラマーを集めれば、同じレベルのプログラマーを引きつけることができることを見抜いていた。スター・プログラマーは、自分のフィールドで最高といわれる人たちが集まるところで仕事をしたがるものだ。(p.66)
1971年、半導体技術が幾何級数的なベースで発達を遂げる可能性があることをゲイツに教えたのは、一緒にマイクロソフトを設立したポール・アレンだった。「幾何級数的なベースの現象」などめったにあるものではない。ゲイツは疑い深げにアレンに聞いた。「きみは真面目にいっているのか?」。(p.76)
私たちは、ゲイツとマイクロソフトの社員たちを「実物大で」見るべきである。そうすれば、彼らがもたらす「恩恵」も実際のサイズで見えるはずだ。マイクロソフトの人間はどんなことでも徹底的に、しかも効率よく検討する。彼らは、評価と改訂という終わりのないプロセスへの答えは経験からしか得られず、経験を積めば積むほど新しい答えが生まれてくる、ということを知っている。だから、いつでも彼らは「仮の答え」で行動し、「次の答え」を探し続ける。(p.373)