葉桜の季節に君を想うということ


葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午/文藝春秋)

ジャンルとしては「本格ミステリ」ということになるらしい。ミステリの定義はよくわからないけれど、読み進むにつれて読者に真相が明らかになっていく構造になっている小説、ということになるのだろうか。

読み終わってから振り返ってみた感想として、とても面白く、よく出来た話しだったと思う。
ミステリというジャンルだったからといって、その謎解きに意外性があるというだけでは、個人的にはあまり評価の対象にはならない。

この作品は、それだけではなく、希望を与えるテーマを持っていた。タイトルのつけ方もセンスがいい。
「このミステリーがすごい」などの各セレクションや、各賞で好評を得た作品らしいけれども、ミステリという枠でのみ評価されるにはもったいない、挑戦的な小説だと思った。

名言

そうなんだよな、みんな、桜が紅葉すると知らないんだよ。赤もあれば黄色もある。楓や銀杏ほど鮮やかではなく、沈んだような色をしている。だから目に映えず、みんな見逃しているのかもしれないが、しかし花見の頃を思い出してみろ。日本に桜の木がどれほどある。どれだけ見て、どれだけ誉め称えた。なのに花が散ったら完全に無視だ。色が汚いとけなすならまだしも、紅葉している事実すら知らない。(p.466)

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