デス・スウィーパー

デス・スウィーパー 1 (1) (KADOKAWA CHARGE COMICS)
デス・スウィーパー(きたがわ翔/角川書店)

※2007年12月現在、1巻まで発売中
スゴい連載が始まった、と思った。
スウィーパー(清掃人)というのは、死体のあった部屋を掃除する仕事で、この作品ではその現場をテーマにしている。病院ではなく自宅で死んでいるわけなので、その死にはたいがい、何らかの事情がある。死んでから発見までの間に長い時間が経過しているために、原型をとどめていないことも多い。
昔よく聞いた都市伝説で、「死体洗い」という高額なアルバイトが存在するという話しはあったけれど、この「デス・スウィーパー」という職業はそれを超える凄絶さだ。
この物語の中でも語られているように、日本では、死体というものが、不自然なくらいに社会の表舞台から隠蔽されている。雑誌やコマーシャルは、キレイなものばかりをアピールするので、死というものをイメージする機会は普段ほとんどない。しかし、毎日数多くの人が自殺や不審死で亡くなっていることを考えれば、気づかないところでそれらの死を隠密裏に処理している人が存在しているということは、間違いない事実だ。
スウィーパーである三輪の「諦めて覚悟しろ。生を受けた時から逃げ道なんてないんだ。お前も・・そしてもちろんオレにもだ。」という言葉は、岡崎京子の「リバーズ・エッジ」の登場人物である、吉川こずえを思い出させた。
吉川こずえもやはり、川べりの湿地に棄てられた死体を見た後、「あたしはね、ザマアミロって思った。世の中みんなキレイぶってステキぶって楽しぶってるけどざけんじゃねえよって。ざけんじゃねえよいいかげんにしろ、あたしにも無いけどあんたらにも逃げ道ないぞザマアミロって。」とつぶやいたのだった。
きたがわ翔といえば、「NINETEEN」や「HOTMAN」のような、さわやか系やほんわか系が多いイメージだけれど、ものすごい方向転換をしてきた。あいかわらず絵柄はキレいだし、美形の登場人物が多いのだけれど、それでいてこのテーマというのはかなり思い切った選択だ。これからどのように物語が進んでいくのか、とても興味がある。
【名言】
生き物にとって唯一平等なのは死です。そのネックレス・・このネックレスの方があなたの命よりずっと長く残るでしょう。ずっとね・・。これが真実です・・。
諦めて覚悟しろ。生を受けた時から逃げ道なんてないんだ。お前も・・そしてもちろんオレにもだ。キレイ事並べても、生きているうちは平等なんて有りえないんだ。金持ちだろうが貧乏人だろうが美人だろうがブサイクだろうが、みんないずれは死ぬ。「死」だけは常に平等にやって来る・・。
この仕事についた時・・図書館やネットで死体の写真を探してみた。海外のものは見つかりやすいが、この国のものがない。まるで死体が存在しないかのように徹底してる。見つかってもせいぜい戦中や関東大震災のような古いものだ。オレは思った。これははたして正常だろうか?