赤い楯―ロスチャイルドの謎(広瀬隆/集英社)
これを調べるのに、どれだけの労力が必要だったのだろうと、ただ呆然とするしかない資料の山からこの作品は作られている。どの章もある時代や地域をテーマにして、見事に話しがまとまっている。この作者の驚異的な情報収集力と、分析力だと思う。
「私物国家」を読んだ時にも感じたことなのだけれど、これだけの情報をいっぺんに示されても、理解力がそれについていかず、結局細かいところまではよくわからなかった。
毎ページ毎ページで、たてつづけにこれだけの系図や情報を出してこられると、すごいことが世の中の裏では行われているのだ、ということだけは漠然とわかる。
【名言】
「わが国の銀行が全世界のランキングで上位を占めたと言っても、アメリカやヨーロッパの銀行家はケイマン特急でスイスに金塊を蓄えているのだから、比較にならない。表の帳簿と裏の帳簿を混同しないほうが賢明だろう。土台、われわれと欧米人では、生活のレベルが違う。」(p.362)
「保険会社は、事故や事件の真相をつかまなければやたらと保険金を支払わなければならないため、秘密警察をはるかにしのぐ情報収集力が求められる。」(p.437)