CosMos(アーヴィン・ラズロ/講談社)
すごい本だ。同じ著者の本である「叡知の海」を読んだ時と比べると、だいぶ衝撃は落ちるのだけれど、それは単に、読んだ順序の問題であるかもしれない。「叡知の海」を読む前に、この「CosMos」を読んだら、やはり相当な衝撃を感じたのだろうという気がする。
内容的には、さらに最新の研究結果や、科学技術の進歩を踏まえてバージョンアップされているので、より先進的になっていると言っていい。ただ、ちょっと色々な情報を詰め込み過ぎているためか、結局何が言いたかったのかはっきりしないところが多々あった。
よりスピリチュアルな傾向に進んでいて、いきなり「これが正しい姿なのです」というような結論が出されて、その論拠がよくわからない抽象的なまとめもあったので、その点も、衝撃度が落ちた原因だろう。全体の結論として、環境保護など、ありきたりな意見に落ち着いてしまっていて、あまり新しい視点が含まれていなかった点は期待外れだった。
しかし、一冊の本の中で、これほど包括的に、量子論や宇宙論や心理学や脳科学などあらゆる分野の最先端の成果をまとめて、さらにそこから導かれる未来像というところまで示している本は、他には見当たらないだろうと思う。
【名言】
プラトンも「二つのものは、第三のものなしにきっちりと結び合わせることはできない。二つのあいだには、結びつきを可能にするなんらかの『つながり』がなければならないのだ。そして、最も美しい『つながり』とは、自らと自らが関係を持つものとを最も完全な形で融合させるものである」と理解していました。彼は、自然界における「最も美しいつながり」は、a:b=b:(a+b)が成り立つように線分をニ分割したときに起こる関係だと考えました。(p.75)
おそらく、物理的世界を情報的にとらえたときの基底状態に相当するものがはじめて垣間見られたのは、真空空間は虚空とは程遠い状態であるとわかったときだったでしょう。そして今では、絶対零度においてさえも、真空によって具現化された量子揺らぎが自然界のあらゆる物理的エネルギー場の基礎をなしているのだとみなされるようになっています。(p.89)
時空という顕在領域でホログラムが膨大な情報を符号化し具現化することができるのは、光の基本的特性のおかげです。なぜなら、振動レベルの違う多数の光子が同時に時空の一点を占めることができるわけですから。(p.92)
科学は今、「言葉」−−コスモスの顕在領域の根底にあって、その領域を支配する情報−−そのもののほうが、その表現の場である現象世界に属するエネルギーや物質よりも基本的であるという見解において、スピリチュアルな伝統に一致しようとしています。(p.114)
こんにち、加速度的に土地が痩せ、浸食が進んでいる状態は大いに危険だといえます。昔と違って今は移動先となり得る新たな土地もありません。今回の脅威は、全人類が持続可能な規模で食べていくことは無理かもしれないということなのです。(p.260)
太陽光や風力、潮力、地熱エネルギーの生成や利用はすべて分散化が可能です。実は、エネルギーが中央で集中的に生成されてから分配されるという現在のやりかたでは、生成の非効率性やケーブル・送電網全般での漏れが原因で、生成エネルギーの4分の3以上が無駄になっています。(p.277)