サイコ・タフネス(伊東明/阪急コミュニケーションズ)
「不安をパワーに変える」というテーマで、心理学的に自分の気持の状態をコントロールする方法について書いた本で、特に、スポーツ選手をメインターゲットにしている。
スポーツ選手というのは、ここ一番という時に、思うように身体を動かさないといけないわけだから、大舞台に立つ時にはかなりのプレッシャーを抱えるものだと思う。この本では、場面別にかなり細かく、パフォーマンスを発揮するための具体的な方法について解説がされている。
たとえばイチロー選手の心構えを聞いても、一流の選手というのは、必ず独自のメンタルトレーニング方法を確立しているものなのだろうと思う。しかし、スポーツということに焦点をあてた心理的なトレーニング方法は、一般的にはあまり認知されている分野ではないらしい。
この本で説明されている様々なメソッドを見て、精神と身体を安定させるというのは、かなりの部分、技術的に解決出来る「技」なのだと思った。
最終的には、それは自分自身で、自分に合ったやり方を見つけるものなのだろうけれど、その前提として基本的な知識を知っておくことは、型を持つ際にとても有効だろうと思う。
【名言】
世の中には、「成功が怖い」と思っている人は意外に多いのです。
人間には「耐えられる不幸のレベル」がそれぞれにあります。それと同様に「耐えられる幸せのレベル」もあって、自分の想像を越える幸福に包まれると不安になるのです。
シンデレラ・ボーイなどと呼ばれ、突然スターダムにのしあがったミュージシャンやスポーツ選手が、麻薬の所持や反社会的な犯罪でスキャンダルを起こし、失脚する例がしばしばあります。これも同じような心理が引き起こす現実です。(p.48)
観客によって選手が不安になる理由には、主に次の理由があります。
自分に自信がないとき、「観客は自分には期待していないだろう」「観客は自分の失敗を見に来ているんだ、負けたら喜ぶだろう」というように、自分の不安を投射する対象になるからです。(p.125)