学生時代からの友人の石井が、鎌倉の長谷にワインバーの店を出した。
就職活動の時に、「これだ!」と思える仕事にめぐりあわなかった彼は、惰性で就職をすることを潔しとせず、アルバイトをしながら、いくつもの紆余曲折を経て、ある時ワインの世界に触れて、開眼する。
もともと食への興味が深い男だったので、どんどんとその世界を掘り下げていき、語学やソムリエの資格を勉強したり、シチリアのワイナリーに働きに行ったり、それがワインに関係することであれば何でもやった。
シチリアから戻った後には、レストランのソムリエの仕事に就く。飲食業というのは体力的に過酷な仕事だ。週1回の休みで、朝から夜遅くまで働き続ける。興味に合った仕事ではあっても、長く続けるうちに、このまま消耗してしまうのではないかと思っていた。
そんな折、地元の鎌倉で自分の店をひらく機会が訪れた。細部に至るまでの美学と世界観を持つ彼には、オレは自分の店を出すというのは最もふさわしい選択だと思った。
店を、建物そのものから建てることにして、仕入れ先やメニューや内装など、すべてを彼が自分自身でプランニングをして、ようやく去年の終わりになって形になった。
そういう歴史があった末での、今回の店のオープンなので、オレは、この店が世に生まれたことが、とてもとても嬉しい。
■ボタン(Beau Temps)
鎌倉市長谷1-14-26
(江ノ電長谷駅から徒歩4分)
0467-40-6172