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これからの世界で起こりうるリスクを紹介するという形での未来予測。
様々な分野についての将来の分析がまとまっていて、これ一冊で幅広いトピックに触れることが出来、面白い本だった。
「開発独裁優位」というリスクの説明が、とくに面白かった。
中国は、13億8千万人の全国民の顔を数秒で特定出来るデータベースを構築しているという。アリペイやウィチャットペイといったキャッシュレス決済が普及しているため、国民のお金の出入りまで正確に細かく把握が出来てしまう。
たとえばアメリカのような国では、いくらGAFAのような企業が個人データを集めていても、それを勝手に利用することは出来ないし、政府がそれを自由に検閲するということも出来ない。
しかし、中国では、当局が膨大なデータを一手に握って、しかもその利用にあたって何の制限もかかっていない。ビッグデータが「新しい石油」として価値を持つ現在、この独裁が意味する力はとてつもなく大きい。
遺伝子組換えや再生医療などといった新しいテクノロジーに対して、民主主義国は「どこまでやっていいか」という倫理面について議論と合意形成を重ねながら、少しずつ実用化を進めているけれども、中国の場合は、党がやるといえばそれで決まりで、すぐにでも際限なく実用化することが出来る。
日本にいると、何事にも政府の規制がかかっていることが当たり前で、倫理的問題があるような事柄はとくに、時間をかけて慎重に進められると思い込んでしまっている。
でもそれは、世界共通のルールというわけではなく、躊躇なく新しいテクノロジーの導入を進める中国のようなゲームチェンジャーが現れた場合、世界の技術バランスは大きく崩れることになる。
これまでアメリカや日本のような資本主義国がリードしてきた経済戦争は、この先、ゲームのルールが変わることによって、中国という国にとってものすごく有利な時代になるという印象を持った。
その他、とくに興味深かったリスクの内容は下記。
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No.24「始めたら止められない」リスク(日本の水素やリニア開発投資)
No.51「自動運転車の送迎渋滞」リスク
No.67「火葬渋滞」リスク(都心の火葬場が不足する)リスク
No.76「存在感ゼロ」リスク(ネットで検索しても企業名が上に出てこない)
No.98「地球寒冷化」リスク(温暖化ではなく、今後太陽活動が停滞するという観測がある)
名言の引用
IT産業の歴史は覇者の交代の歴史である。極端に強い覇者が現れ、覇者に批判が集まり、独禁法の適用などがされる。ただし、実際には批判や独禁法適用はさほど影響を与えず、新しい領域から次の覇者が登場することで前世代の覇者を弱体化させてきた。
IBMもマイクロソフトも絶頂期には、両社が揺らぐことなどまったく想定できないほどの強さを誇っていた。とするとGAFAにも同じことが言える。まだ見えていない新しいトレンドに乗り、四社を覇者の座から引き摺り下ろす次の覇者が登場する可能性は大いにある。(p.43)技術はしばしば、突如として指数関数的に進化し始める。だが、世にあまたある市場予測や技術予測の多くは、「年率xx%」といったリニアな伸びを想定する。「現在は穏やかな変化であるが三年後から急激に進化し始める」などという予測は立てがたいということことかもしれない。だがこのことが、技術進化の速度を見誤る落とし穴になる。(p.77)
リスクマネジメントの観点から言うと、地球が寒冷化していくのか、温暖化していくのか、白黒を付けることに意味はない。気候変動のメカニズムや太陽との関係について分かっていないことはまだまだある。確実なのは、誕生以来、地球は温暖化と寒冷化を繰り返してきたということである。どちらかだけを確実に起きる前提としてとらえることはリスクマネジメントの立場からすると適切ではない。(p.279)
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