蒼穹の昴

蒼穹の昴(1)
蒼穹の昴(全4巻)
(浅田次郎/講談社)
【コメント】
どこまでが史実で、どこからが仮想の出来事かはっきりわからないのだけれども、基本的には実際の人物や事件がベースになっているので、中国の清時代の歴史を小説仕立てで面白く理解することが出来る。
いかにして清王朝が栄え、衰えて、外国に侵略をされていったかがわかりやすく書かれてあり、特に、李鴻章がイギリスと香港租借についての交渉をする場面は、すごい臨場感がある。
日本はいろいろなものを中国から取り入れたけれども、科挙と宦官の制度は取り入れなかった。もしそこまで中国の真似をしていたら、19世紀のうちに日本はとっくにどこかの植民地になっていたかもしれない。
清王朝の最後までは書かれていなくて、物語は途中まで終わってしまうので、この続きの、孫文や毛沢東の話しについてもっと読みたいところだった。
文庫版は全4巻。なかでも1巻が、中国のスケールの大きさを感じさせる内容で面白かった。
【名言】
欧州列強には植民地経営によって自国を富ませてきたという長い歴史がある。そしてこの東洋の大帝国をいかにして収奪するかは、地球上に残された最後にして最大の懸案にちがいなかった。(2巻p.63)