医者に殺されない47の心得


医者に殺されない47の心得(近藤誠/アスコム)

「がんは原則として放置したほうがいい」「健診を受けることで、かえって健康をそこねる」など、医者にあるまじき主張がたくさん出てくるけれど、読み進めるうちに、これは頭のおかしな医者の戯言ではない、ということがわかってきた。
筆者が言う、がんの手術をしたり、抗がん剤の投与をすることで、余計に寿命が短くなったり、QOL(クオリティーオブライフ)がいちじるしく低下する、というのは本当にそのとおりだと思う。それを、感情的な根拠で主張しているわけではなく、この本で述べられている説明は、非常に科学的でロジカルだ。
これまでの常識で、がんは早期に発見出来れば幸運なこと、抗がん剤なるあらゆる手段を使ってでも延命をするべき、と勝手に思い込んでいたけれど、医者に言われるがままに、何も考えず手術や投薬を受け入れることが、どれほど危険で取り返しのつかないことかというのがよくわかった。

筆者の肩書は、慶応大学医学部の講師。年齢はもう65歳を超えているから、普通であれば、教授になっていてもまったくおかしくない歳であるのに、いまだに講師の地位にあるということからも、この筆者がいかに、医学会のメインストリームから疎まれている、異端の人かということが察せられる。
筆者が言っていることをすべて信じるというのも極端なことと思うけれど、どのような悲惨な生活状態になっても一日でも長く生かすことを医療の本分と考える、多くの医者よりは、ずっと共感が出来るし、一般の人の感覚に近いところがあるんじゃないかと思う。

【名言】

日本人の3分の1はがんで亡くなりますが、実は、がんほどまぎらわしく、誤診の多い病気はありません。
ただのおできや炎症を「がん」と決めつけられて、胃や乳房をごっそり切り取られたり、命を落としたりしている人が山ほどいます。くれぐれも気をつけてください。
「この方法でがんが治った」「末期がんから生還した」という話は、星の数ほどあります。しかしどれも、「そもそも本当にがんだったのか」が極めてあやしい。(p.47)

よく「がんが見つかったけど早期だったから、手術できれいに取ってもらえた。おかげで5年たった今も、再発せずに元気でいる。私はラッキー」と言う人がいますが、実は無駄な手術で損をしたんです。どんな最新鋭機を使って早期発見をしても、本物のがんはそのはるか前、できてすぐに、あちこちに転移しています。(p.53)

薬は毒物です。すべてに副作用のリスクがあります。少量、短期の服用なら、肝臓や腎臓が薬毒を処理してくれることが多い。しかし習慣化すると、副作用が確実に現れます。そして短期でも、少量でも、服用する人の健康状態にも関係なく、薬が毒物である以上、いつ副作用となって現れるかはまったく予測がつきません。(p.69)

昔、家庭で亡くなっていた人の「自然死」の大部分はおそらく、がんだったと思うんです。もし診断をしたとしたら、男女ともに胃がん、女性ならそれに次いで子宮がんが多かったでしょう。
この2つは、どちらも治療しなければ最後まで痛みがなく、ラクに亡くなるんです。それから、病院に行かないお年寄りたちの「老衰死」。それこそ、枯れるように死んで、診断のつかない死。その老衰死の中にも、がん死はいっぱいあったと思います。医療が発達するとともに、自然死や老衰死を身の回りで見なくなって、忘れられてしまった。代わりに、医療による悲惨ながん死のことばかり見聞きするようになった。それが、現代人がこんなにがんを、そして死を恐れるようになった、いちばん大きな要因のような気がします。(p.95)

がん病巣には、直径1ミリに育った段階で、約100万個のがん細胞があります。本物のがんならそれ以前に血液にのって、あちこちに転移しています。0.1ミリでも転移する能力があるほど、がん細胞は強力です。
分子生物学の研究が進んで「がんは当初から転移する能力がある。がんが大きくなってから転移するという説は間違い」と判明しています。
今の医学でどんなに「早期」にがんを発見できても、直径1ミリ前後から。そのときすでに、がん細胞は最低でも10億個に増えて、とっくに転移もし終えています。世間でいう「早期がん」は、がんの一生の中では熟年にさしかかっているんです。(p.130)