両手を投げ出して

片手で、いざという時のための命綱を握り締めておいて、
もう片方の手で自分の欲しいものを得ようという
その心根を、オレは美しいと思わない。
両手を投げ出して、
受け止めてもらわなければ死んでしまうのだという
その瀬戸際に立ってはじめて、
本当に大事なものは自分を救うことを知るだろう。
受け止められることが果たしてあるのかどうか、
それは両手を離してみなければわからない。
しかし、それでもなお身を挺して飛び込もうとする、
その愚直さが人の胸をうつのだと、オレは思う。