赤い指


赤い指(東野圭吾/講談社)

「どこの家庭でも起こりえる問題」と帯にあった通りで、とても現代的な家庭の問題をテーマにした小説だと思った。自分だったらどうするだろう、と考えさせられるところがたくさんある。描写にはものすごく臨場感があるものの、登場人物の行動や考え方にどうも共感が出来ず、その点、あまり現実的に思うことが出来なかった。
最初から結末まで、さすがに上手くまとまっていると思ったけれど、中学生の息子が結局どうなってしまうのかということがわからなかったり、根本的には何も解決されていないということもあって、すっきりしないところも残った。設定があまり細かくはなく、深く掘り下げられているような感じでもないので、短編的な作りをした小説だと思う。
【名言】
彼は赤茶色に変色した畳に目を落とした。その畳が青かった頃のころを覚えていた。彼はまだ高校を出たばかりだった。親父はあんなに一生懸命に働いて、この程度の家しか建てられないのか。そんなふうに父親を内心で罵っていた。
しかし、と昭夫は思う。自分は果たして何をしてきただろう。馬鹿にした小さな家に戻ってきて、まともな家庭さえも築けないでいる。それだけならまだしも、他人の家庭まで不幸にしてしまった。その要因を作り出してしまった。(p.68)
「どういうふうに死を迎えるかは、どう生きてきたかによって決まる。あの人がそういう死に方をするとしたら、それはすべてあの人の生き様がそうだったから、としかいえない」(p.148)