1000に3つ

野球で、バッターの成績を測る目安には、打率と安打数という二つの要素がある。
どちらも、同じようによく使われるけれども、その数字を伸ばそうとした時、この二つの要素の間で、心理的には大きな違いがある。
安打数は、打席に多く立てば立つほど、必ず数字が増える。
しかし、打率のほうは、打席に立つことで、増える可能性もあるし、逆に減ってしまう可能性もある。
だから、気持ちの上でのびのびと数字を伸ばしていくことが出来るのはどちらかというと、必ず増えていく一方である安打数のほうだ。
この、水晶堂というブログに記事を書くにあたっては、この二つの要素でいうと、打率よりも安打数ということを意識してきた。
このブログで書いている文章のほとんどは、世に公開してもしなくても大して変わりはないものであるということを自覚しつつ、とりあえず打席に立たせるということを習慣にした。打率で言うとするならば、とうてい3割というものではなく、3分にも満たず、せいぜい3厘ぐらいだろうと思っている。
それでも、1000個の記事があれば、そのうち3つくらいは誰かにとって本当に意味のある内容が生まれるはずという気持ちでやってきた。その3つは、最初から作ろうと思って作れる3つではなく、1000個作ってはじめて副産物的に生まれる3つだ。
非才の身であってみれば、質を意図的に作り出すことは難しいけれども、量は継続によってかろうじて作り出すことが出来る。それは魚の生存戦略と似ていて、個体の数が多ければ、そのいずれかが思いもかけなかったところで新しい環境に巡り逢うきっかけになり、想像を超えた創発をみせる可能性もある。そういうことを楽しみに、今、この水晶堂を続けている。