司馬遼太郎の「世に棲む日日」を読んで以来ずっと、訪れてみたいと思っていた萩に、ちょうど吉田松陰の150回目の命日の頃、行ってきた。
 
萩の城下町は、北を海に、それ以外の三方を川に囲まれた形になっていて、マンハッタンのように橋でつながって本土から中州に渡るような地形になっている。
ほとんど真ったいらな土地なので、自転車でとてもまわりやすい。東萩駅の目の前にレンタサイクルの店があり、そこに荷物を預けて手ぶらで動くことが出来た。
 
萩の中心からやや離れた、東のほうに松下村塾の跡地がある。小屋だったところを改築したらしく、八畳くらいのスペースが「講義室」になっている。講義用の文机が置かれていて、そこで講義がおこなわれていたことを想像すると、かなりお互いの距離が近い。萩の市街から離れた、ひっそりと静かな場所にあり、集中して勉強が出来た環境だったのだろうと思う。
 
松下村塾より更に奥のほうに行くと、松下村塾の原型を作った、松陰の叔父である玉木文之進の生家があり、そこから急な上り坂を登っていくと、吉田松陰の生家跡がある。建物自体はもうないけれど、礎石が残っていて、家の間取りがどうなっていたかがわかる。そして、その生家跡の隣りに、吉田松陰と高杉晋作の墓地がある。
 
その辺りは、かなり高台になったところで、萩市内が一望できる見晴らしの良い場所だった。遠く、萩城や日本海も見渡すことが出来て、松陰はここで、畑を耕しながら父親から漢文の素読を教わったりしていたのだという。
暮れゆく萩の町を見ながら、150年前に同じ場所で同じような景色を見て、日本のことを真剣に考えて29歳で世を去った思想家のことを思った。
世に棲む日日 1巻
世に棲む日日 2巻
世に棲む日日 3巻
世に棲む日日 4巻