千尋の紹介で、彼女が通っているという護身術のトレーニング場を見学させてもらった。イスラエルが発祥の護身術ということで、SWATやスペツナズも正式教科として取り入れているという、まるで「ゴルゴ13」みたいな世界だった。
地下のトレーニングルームは、40畳ほどの畳敷きの広間で、前面が鏡張りになっている。見学したのは「レベル3」と「レベル2」のクラスで、ピストルを背中につきつけられた時の対応の仕方について、モデルガンを使って実習をおこなっていた。
日本でそんな事態に遭遇することがある時はよっぽどだと思うのだけど、もしそうなった時には、確かにこれは知っておくと役に立つ技術だろう。
クラスはレベル1から始まって5まであり、レベル5になると、自分の身を護るだけでなく、同行している人の身を警護する技術に発展するらしい。
待合室でベンチに座っている時、隣りにいた実習生同士の会話で
「この前貸した防弾チョッキどうでした?」
「あー、あれ意外に重いんだね。あれなら至近距離から撃たれても大丈夫って気がしたよ」
というやりとりが聞こえてきて、一体この人たちは何者?という謎が残った。