ミュージッククリップのような、映像の美しさを第一義にして創られた、こだわりの世界。ここまで徹底して、独自の世界観を作り上げた映画というのは、他に類を見ない。舞台も不明、時代も不明、政治体制も不明という、徹底した無国籍ぶり。
日本語でも中国語でも英語でもない、「円都(イェンタウン)語」とも呼ぶべき、言葉から作ってしまうというのはすごかった。特に、リョウ・リャンキ(江口洋介)の混ざりっぷりはあまりにオリジナルなので、実在するどこかの言葉であるような気がしてしまう。
シルク・ド・ソレイユのステージでも思ったことだけれど、「単語」というレベルを越えた「言語」そのものを新たに作り出してしまうというのは、創造の究極だと思う。
ほとんど全編で字幕が出るあたりは、邦画というものとはかけ離れた内容になっているけれど、しかしこの、すべてを呑み込む混沌を受け入れる素地があるのは、やはり邦画なのだろうと思う。
監督:岩井俊二
出演:三上博史、Chara、伊藤歩、江口洋介