想像ラジオ


想像ラジオ(いとうせいこう/河出書房新社)

いきなり、何の説明もないままラジオ番組のDJからはじまり、「想像ラジオ」の正体がだんだんとわかっていくという、ちょっと変わった構成の小説。
「想像ラジオ」というのは、かなり漠然とした概念のようなもので、リスナーと発信者の関係も曖昧だし、その仕組みだとかルールもよくわからない部分が多い。

この小説の世界全体が、とても境界線がぼんやりとしていて、大きなまとまりとして、一つに溶け込んでいるような感じがする。死ぬというのは、まわりとの境界が無くなることなんだなというようなことを思う。そういう感覚を、理屈ではなく、雰囲気として伝えてくる、ちょっと不思議な小説だった。

【名言】
作家っていうのは、俺よくわかんないけど、心の中で聴いた声が文になって漏れてくるような人なんじゃないかと思うんですよ。その場で霊媒師みたいに話すんじゃなくて、時間かけてあとから文で。しかも確かにそれが亡くなった人の一番言いたいことかもしれないと、生きている人が思うようなコトバをSさんは、なんていうか耳を澄まして聴こうとしていて、でもまったく聴けないでいるってことじゃないか。(p.72)

「僕は別に霊界の存在をここで否定したいわけじゃないんだけど、ただ、もし霊界があるなら人類絶滅の瞬間にそこは最も栄えるだろう。でも、僕が言ってる死者の世界は逆だ。そこは生者がいなければ成立しない。生きている人類が全員いなくなれば、死者もいないんだ」(p.137)

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