宮本から君へ


定本 宮本から君へ(全4巻)(新井英樹/太田出版)

とんでもないマンガが、埋もれていたものだと思った。
長らく絶版になっていたこの作品だけれど、最近、あらたに新装版として太田出版から全4巻で発刊された。
連載当時、高校生の頃だったと思うけれど時々は読んでいて、熱っくるしいし、読みにくいし、疲れるマンガだなあと思っていた。今、あらためて読んでみると、これはスゴい。
自分が思う「カッコいい」の基準が、当時と今とで変わっているからだろうと思う。というよりも、その頃は、人生の陰影なんてことをこれっぽっちも考えてなかったからかも知れない。
キャラクターの一人一人に、ものすごく存在感がある。現実にいそうというリアリティーとは違うのだけれど、きっちりとその人物の背後にある歴史を感じさせる厚みがある。
こんなにも、読んでいて先が気になるマンガは久しぶりだった。今回の新装版では、最終巻の最後に、「その後の宮本」を描いた短編も収録されている。これも、最高にいい。
【名言】
「ひ・・ひと月も
ひと月も!
たってないのに、いい加減でしょ!
薄情でしょ、私・・」
「でも・・好きだ
俺の・・ささえになってる」(1巻 p.179)
「会社やめる理由って・・何なんですか?
もしよかったら・・」
「宮本、俺はもう28だ!
背伸びなしで30が見えてる。
30は男が動かなくなる理由になる。
そういう事だ」(1巻 p.319)
「仕事ぐらいできなきゃ・・ダメなんです。
僕が女でも、今の僕には惚れませんから」(1巻p.555)
「宮本さんの手はねえ~~
優しくない。
壊されそう。
熱くて怖いよ」(2巻p.400)
「情けないことに、別れてすぐ人恋しさが募った
他人の思い出の中の自分の寿命を考えた
俺が・・死んだら」(3巻p.169)
「たいした相手じゃねえな。てめえの体に聞いてみろよ。もう次やる気でいんだろ
とどめ刺せねえ奴ぁ素人だっての。
相手にネバギブアップ言わせるようじゃ怖かねえよ」(3巻p.473)
「ええやないの勝手しとったら・・
人間生きとる事自体わがままなんやから。
せやけど、勝手しとって割り食う人間の顔色見るのは卑怯ちゃうか」(4巻p.274)
「俺とてめえの関係はよ
憎むか惚れるか二つに一つだ
おら、どっちだ八方美人さんよ」(4巻p.418)