死と生きる(池田晶子,陸田真志/新潮社)
池田晶子と、死刑囚である睦田真志の往復書簡による語り合い。池田晶子の言葉は厳しい。厳しいことを言っているというよりも、正しいことを言おうとすると、それは普通の人間にとっては厳しい言葉になってしまうということなのだろう。
池田晶子が、睦田真志とのやりとりを続けるために、裁判の控訴をするよう説く場面がある。睦田真志は控訴を行って延命をすることを潔しとしないのだけれども、それを説得する池田晶子の言葉がすごい。言葉というのは、とてつもない力を持っているのだと思った。
たとえば雑誌に記事を書いて一般大衆に語り掛けるというのは、語りかける対象人数は多かったとしても、一人一人に対して最終的に責任を取るわけではないので、それほど覚悟が必要なことではない。
しかしこの、死刑囚との1対1の対話というのは、並みの覚悟で出来る仕事ではない。無責任な発言は許されないし、本当に自分自身もギリギリのところで考えざるを得ない。だからこそ、この語り合いは、著者のような覚悟を持った人間にしか出来ない、価値のあることなのだと思う。