異次元は存在する(リサ・ランドール/日本放送出版協会)
タイトルからして、サイエンス・フィクションの中の話しかと思ってしまうけれども、現在検討されている最先端の科学の中で、かなり確からしいと思われている学説であるらしい。
著者のリサ・ランドール氏は数学者で、5次元宇宙についてひたすらに数学的に分析をして、その存在を予測したらしいのだけれど、この本では、逆に一切の数式を利用せずに、3次元は、5次元の膜(ブレーン)に張り付いた存在、という概念を使って説明をしている。
NHKのテレビ番組を元に作成されているため、宇宙飛行士の若田さんがインタビューをしていたり、図表をたくさん用いていたりと、この本ではかなりわかりやすい内容にまとめられている。
ものすごく面白いと思ったのは、次の2つで、
・宇宙に存在する4種類の力(電磁力、重力、強い力、弱い力)のうち、重力だけが、不自然なほどに極端に弱すぎる。重力は、他の次元の宇宙と行き来することが出来るエネルギーなのではないかと考えられている。そうすると、重力を観測することによって他の次元を観測出来る可能性がある。
・通常の世界では、「エネルギー保存の法則」が常に成り立つが、ミクロの世界では、素粒子が完全に姿を消すという現象が起こることがある。これは、5次元空間の向こうにある、別の3次元空間に移動しているのではないかと考えられている。
ということだった。
実験によって検証が出来ない理論だけでは、ノーベル賞のような対象にはならないらしいのだけれども、なんと、この理論を実証するための装置がスイスで完成して、年内にその実験がおこなわれるらしい。この、SFの世界のような出来事が、現実世界で検証されようとしている今というのは、物理学に大きな革命がおころうとしている一歩手前の位置にいるのかも知れないと思う。
【名言】
若田「ところで、科学者として女性であることの難しさはありますか。」
ランドール「そうですね。実は、インタビューでこの質問を受けることがあまりに多くて、それが少し煩わしく感じます。たとえば、もしわたしが難解な物理学を説明するインタビューを5分受けると、そのうち2分は女性の科学者の自分を説明するのに費やさなければならないんです。」(p.45)
2007年、スイスのジュネーブ郊外にある静かな酪農地帯で、ひとつの実験が行われようとしている。実験場は、地下100メートルのところにつくられた。地中には、円周27キロメートルのトンネルが掘られ、そこに水素の原子核をつくる陽子を複数、超高速で走らせて衝突させる。衝突で粉々になった粒子の破片は、ある確率で姿を消すことが予想されている。本来消えるはずのない粒子が姿を消すことが確認された場合、粒子が姿を消した先が見えない5次元空間であると考えられる。(p.52)