起きていることはすべて正しい(勝間和代/ダイヤモンド社)
世界観が変わるほどの新しい概念はなかったのだけれど、著者の思想について体系的に、とてもわかりやすくまとめられている。いかにもビジネス書的な文字組みや、あまりパッとしないイラストのために、かなり堅苦しい印象を与える点で損している感じがするけれど、内容は読みやすい。
黒木瞳さんらと著者との個人的な交友については、特に興味はないので、そういう部分は蛇足と感じたけれど、全体的にはとても中身が濃い本だと思った。
この著者の人は、既存の概念を自分なりの捉え方で再構成して、新しくシンプルな言葉で言い直す表現に長けている人だという印象だった。
ポジティブシンキングの効用について、「成長パスの確率分布を高めること」という言葉で説明していたり、フォトリーディングのことを「虫の知らせのトレーニング」と表現したりしているところなど、面白い考え方だと思う。
巻末には、関連文献や参考サイトを網羅して掲載しているだけでなく、著者自身の愛用しているツールやサービスも写真付きで全公開しており、これはとても参考になるところが大きかった。この、惜しげもなく自分自身のノウハウを最大限にオープンにするという姿勢は素晴らしい。
【名言】
筆頭に挙げたいのが「うれしがりすぎない、悲しがりすぎない」ということです。これは意外だと思う人が多いと思いますが、なぜこのことが大事かと言うと、目の前の結果に振り回されすぎないようにするためです。なぜなら、物事の結果は努力に対して、確率分布するからです。(p.60)
些細な意思決定の違いで、同じスタートポイントから始まっても、毎日決めていることと将来のちょっとしたことが積み重なって、どんどんシナリオが変わってくるのです。どこに向っているかを理解して活動している人と、行き当たりばったりで動いている人と、どちらのほうが効率がいいかは、自明の理です。
したがって、どうやって無意識、つまり、潜在意識で処理されてしまうプロセスを自分の味方につけるか、ということが重要になります。私はそれが「引き寄せの法則」の正体だと思っています。他の言い方をすると、この意思決定の流れは「複雑系」とか「カオス」と呼ばれている理論に近いのです。ほんのわずかな初期値の違いが、大きな違いを将来もたらすのがカオスで、ほんのわずかな、些細な行動の違いが、将来大きな違いにつながっていきます。(P.92)
「囚人のジレンマ」という経済学のゲーム理論が参考になります。1番優秀なプログラムは「しっぺ返し戦略」という短いものになります。この戦略は、まず相手を信頼するというスタンスで、信頼から始めます。ですから、最初は自白しないわけです。相手が信頼してくれたら、そのまま信頼の戦略を繰り返しますが、相手が裏切ったら即座にまた裏切りに転換します。ただ、裏切った相手でも、相手がまた信頼してくれたらすぐに信頼に戻す、この繰り返しです。(p.133)
決断することは、人に嫌われるリスクを取ることです。
私たちは、人に嫌われるのが恐いから、気の進まない頼まれた仕事を極力引き受けようとしたり、気の進まない付き合いも断らないのです。しかし、魅力のある人が誠実さを持って仕事を断ってきて、そのことでより魅力を増した場合と、魅力のない人が断らなかった場合と、どちらが私たちにとって、現在も将来も魅力的な人物かということです。すなわち、パラドックスなのですが、積極的に断らないと、自分が魅力的になれないのです。(p.170)
「捨てられない人は、圧倒的にインプットの量が足りない」というのが私の考えです。大量の情報のインプットの中で、捨てて、さらに捨てて、その結果として、インプット5対アウトプット5が実現できます。(p.210)
なぜ、本に書いてある情報はあくまで擬似パーソナル資産であり、人の情報のほうが優れた面があるのでしょうか?
答えは単純で、本に書いてあることは万人向けですから、本当のことはすべて書けないからです。「本当のこと」とは、それを言うと誤解を招く可能性があるとか、批判を招きかねないというような意見のことです。(p.232)
私たちはいま手に入れている事象を過大評価し、将来手に入る事象を過小評価する傾向があるため、ちょっとした決断であっても、痛みをともなうことは躊躇しがちなのです。(p.254)