緻密なプロットの本格派ダークファンタジー「鋼の錬金術師」

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ついに完結。ものすごく面白かった。
絵は柔らかくてほのぼのしているけれど、その内容は、絵柄からは想像がつかないぐらい本格的にハードでシリアス。

圧倒的な能力を持つホムンクルスに立ち向かう

近世ヨーロッパのファンタジーっぽい雰囲気ではあるものの、舞台となっているアメストリスという国にはキリスト教は存在せず、魔法の代わりに錬金術が技術として伝えられている。
「等価交換」を基本にした錬金術の法則や、国家・軍隊の組織形態など、細かいところまで世界観がきっちりと作りこまれていて、かなりリアリティーがある。

敵方である人造人間(ホムンクルス)たちが、「七つの大罪」を象徴しているというダークな設定や、「こんなのどうやって倒すんだ」と思わせる圧倒的な能力と強さを持っているところがシビれる。
それに立ち向かう人間側は、相対的に見て非力なのだけれど、それを補うように、努力とかチームワークとか根性をもって必死に喰らいついていくところに面白さがあるのだと思う。

長編にもかかわらず、次々と新キャラクターが登場してどんどん話しがふくらんでいく展開ではなく、いったん現れた人物は途中で簡単に消えたりせずに、そのままずっと話に関わり続けるという、一つ一つのキャラを大事にしている感じもまたいい。

ところどころ、意表を衝く演出はあるけれども、基本は最初から最後まで綿密なプロットに基づいて構成された、期待をまったく裏切らない王道を征く、読み応えのある作品。
巻末のおまけだけでなく、表紙カバーの裏までしっかりと描き込まれていて、とにかくサービス精神のかたまりのようなマンガだった。

名場面


これだけの通行料だとここまでしか見せられない
そう、等価交換、だろ?
なぁ錬金術師(6巻p.89)


ロイ・マスタング・・
彼は優しすぎる・・
それが強さであり弱点でもあるのです
扉を開けさせてみましょう(10巻p.110)


錬金術師は真理を追い求める者だ
自分に都合の良い所だけ見てそれで済まされて良い訳が無い(11巻p.72)


おまえの手は人を殺す手じゃない
人を生かす手だ(12巻p.67)


私に人間に戻れと?
無理だな
我々は君達とは違う
この眼と身体能力は人間を超越した
目的を持って造られた
君達より優れた品種だ
君達人間が人間である事に誇りを持っているように
我々にも人造人間としての矜持がある(13巻p.150)


「ヒューズを殺したのは貴方ですか?」
「いや、私ではない」
「では誰が」
「ひとつ、という約束だ」(14巻p.115)
神だと?
さて不思議な
この状況でいまだ私に神の鉄槌は下らないではないか(15巻p.113)


この国には無い技術だ、欲しい
技術はいくらあってもいいものだ
特にドラクマという大国と接しているこの地ではな(16巻p.152)


この年になっていくつかの戦いを経験するとわかる
殺す事より生かす事の方が難しい・・とな
エルリック兄弟はその困難な方の道を選んだ
だが少し羨ましくもあるよ(19巻p.88)


「家族ごっこ」たしかにそうだ
あれは上に与えられた「息子」だ
息子だけではない
「大総統の座」も「部下」も「力」も全て与えられた
いわば権力者ごっこだ
だが妻だけは自分で選んだ(20巻p.63)


「死んだ奴に会いたい」も
「金が欲しい」も
「女が欲しい」も
「世界を守りたい」も
全部”欲する心”・・すなわち”願い”だ
どれも本心から湧き上がる感情に変わり無いからな
俺に言わせりゃ欲に貴賎は無え(21巻p.24)


「君の泣き顔が思い出される
またああいう素直な涙が見たいものだね」
「水分は大嫌いなんじゃないですか?
無能になるから!」(23巻p.81)


エンヴィー、おまえ・・
人間に嫉妬してるんだ(23巻p.157)


人間が思い上がらぬよう正しい願望を与える
それこそおまえ達人間が神とも呼ぶ存在・・
「真理」だ(25巻p.125)


ちょっと行ってくるわ
鋼の錬金術師最後の錬成にな!!(27巻p.122)