ホーキング 虚時間の宇宙


ホーキング 虚時間の宇宙(竹内薫/講談社)

ホーキングの業績のうち、特に「特異点」と「事象の地平線」のテーマについて深く掘り下げて解説をした本。
発刊は2005年なので、今となっては若干、情報が古くなってしまっている箇所もいくらかあるし、この人の解説自体が、何を言っているのかわかりにくい、という部分もあるけれど、専門書にくらべればかなり易しく書かれているのだと思う。
特に面白いと思ったたとえ話しが2つあった。
1)南極点にたとえた、虚時間での特異点の説明
特異点があるかどうか、という問題は、宇宙にはじまりがあったかどうか、という問いと同じであるのだけれど、ホーキングは、その特異点がない宇宙モデルというものを考えた。
虚時間での特異点は、時間と空間と区別が出来ないために、球面上に張りついている。それは、地球の南極点というものに似ている。
地球のどこからから、南極点に向かってあるいていくと、ある時、いつの間にか「緯度・経度がない」ところを通過することになる。しかし、南極点そのものは、そこに深い穴が開いているなどの特徴はないので、他の点と区別がつかない。
2)チェスにたとえた、素粒子の挙動の説明
チェスのビショップという駒は、斜めにしか動けない。だから、白いマスにいるビショップは、常に白いマスにいることになる。しかし、まれに、黒いマスにいるビショップを見かけることがある。それは、敵陣で成り上がったポーンがビショップになった場合だ。
素粒子も、基本的には、ビショップが同じ色のマスの中しか動けないのと同じように、規則的な枠内での動きを見せる。しかし、時として、突然種類が変化したり、ワープして違う色のマスに素粒子が移動することがある。
コラムとして、ホーキングその人の人柄や生い立ちについても書かれていて、これがとても良かった。彼は、難病を抱えた、車椅子の科学者というだけではなく、2度の結婚をしていて、波乱に満ちている。
ホーキングの自著では当然書かれていないことばかりで、このホーキングという人がこんなにも栄光と挫折の多い人生をおくっていた科学者だったというのは、まったく知らないことだった。
【名言】
現代物理学の大きな懸案は、アインシュタインの重力理論と量子力学を統一して「量子重力理論」を構築することである。その際、2つの戦略が考えられる。
戦略1、アインシュタインの重力理論から出発して、それを量子化する。
戦略2、量子力学から出発して、それに重力を組み入れる。
つまり、物理学者は、宇宙を記述する基本的な考え方として、相対論をとるか量子論をとるか、という決断を迫られるのである。(p.59)
物理学の方程式の多くは時間を逆さにしてもなりたつ。それを時間反転という。「時間の矢」というものがあって、少なくとも日常生活においては、時間は逆さにならないように思われるが、それでも物理学の基礎理論では時間反転がなりたつことが多い。(p.93)
ブラックホールが蒸発するとき、それは、自らの内部に貯め込んでおいた情報もろとも雲散霧消するのであろうか?それとも、ブラックホール内に落ち込んだ物体がもっていた情報は、なんらかの形で宇宙空間へ戻されるのであろうか?(p.143)
できごとに実数の時間のラベルが貼られるような現実の時空では、時間と空間を区別するのはやさしい。(p.179)
はたして、宇宙にとっていちばん自然なのは、実時間なのか、それとも虚時間なのか?個人的には、宇宙の初期においては、本当に時間は虚時間であり、宇宙が「トンネル」として実在してからは実時間になった、と考えたいが、相対性理論の精神からいえば、観測者によってちがった見方ができる、という可能性もあるだろう。(p.190)

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