マッチスティック・メン


マッチスティック・メン

とても好きな映画。
どこをとっても総合的に完成度が高くて、何回も観返ししたくなる。
まずなんといっても、脚本が素晴らしい。あっと驚かされるというだけではなく、登場人物のキャラクターがよく現れるように、実に細かい部分までセリフや構成が工夫されている。
そして、主人公ロイを演じたニコラス・ケイジの上手さ。過度に潔癖症な詐欺師で、しかし根は悪人ではなく上品という、ものすごく繊細な役柄が、見事に表現されていた。他の登場人物たちも、その奥に隠された本質的な性格まで含めて、配役ととてもよく合っていたと思う。
ロイの家や、事務所、セラピストの部屋など、それぞれの舞台も、そこでの生活の様子が感じられるし、着ている服まで、その持ち主の性格をよく示していた。
DVDジャケットのシンプルな写真や、フォントも好み。
異世界や歴史物など、日常生活からかけ離れた設定の映画を手がけることが多いリドリー・スコットにしては珍しく、現代を舞台にしているけれど、得意領域を外してもなおクオリティーの高い作品を作れるというのはスゴい。
DVDでは、副音声にリドリー・スコット監督のコメンタリーが収録されていて、これがまた素晴らしい内容だ。それを聴きながらもう一度見直すと、「そんなところにまで気を配って撮影しているのか」ということがよくわかり、さらに作品が面白くなる。
ロイの家全体を室内のセットとして作ってあるにもかかわらず、庭にプールを置くことにこだわった理由や、アンジェラから渡される小道具としての灰皿の意味など、普通に見ていたら気がつかないような部分まで、製作者側からの意図が解説されていて、スタッフ全員が、この作品に対して大きな愛着を持っているということもよく伝わってきた。