ラブリーボーン

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とても良かった。
ただ、この映画は、予想を裏切りまくる変化球すぎるので、一般ウケはしないだろうと思う。そういうところも含めて、とても好み。
「ラブリーボーン」というタイトルがいい。「骨」というからには死者のことと思っていたのだけれど、ラブリーな骨とは、どうやら、今まさに生きている人々の骨のことであるらしい。
かなり不気味な殺人犯によって突然命を絶たれた死者が、あの世から現世を眺めて家族にメッセージを伝えようとするという展開から、「ゴースト~ニューヨークの幻」のようなスピリチュアル復讐譚だと思っていた。
実際、そういう前予告の形を取っているのだけれど、これは、意図的に観客をミスリードするための仕掛けだったのかもしれない。
映画の中に現れる天国のイメージなどは、明らかにキリスト教的なのだけれど、思想としては、硬直した一神教のものではなく、それよりも一つ上のレイヤーに進んでいる。
この作品のテーマは勧善懲悪ではなく、いわば悪人正機説のような、より大きな視点での救済だ。
この映画のラストには、多くの人は納得しないかもしれない。憤慨するかもしれない。でも、僕は、とても感動的なメッセージだと思った。
神は行いの正しい人間のみを選んで救うわけではないし、世界を見渡せば、理不尽なことはいくらでもある。
どのように生きても、その一生はほんの一瞬のもので、悪人であろうと善人であろうと、いずれ平等に死は訪れる。
だからこそ、必要なのは復讐ではなく、感謝と赦しと、短い一生の間に起こる全てを受け容れる心なのだ。