スパニッシュ・アパートメント

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これはいい映画だった。
ヨーロッパがEUという形に統合されていく中、あれだけ言葉も気質も違う国同士が同じ共同体になっていくというのは、果たしてどれぐらいスムーズにコミュニケーションできるものなんだろうと、そのことは想像の範囲を出なかったのだけれど、この映画を観て、だいぶリアリティーをもって考えられるようになった。
一つのアパートの中で、ヨーロッパ中から7つの国籍の人間が集まって生活するというのは、いわばEUを小さくして作られたメルティングポットみたいなものだ。
フランスとスペインという、隣国同士で、しかも言語の系統が似通った国であっても、ピレネー山脈を一つ越えただけで、これほどまでに、文化と距離によるギャップというのは生まれてしまう。
育った背景も、性別も、価値観も違う若者が一箇所に集まれば、予想を超えたことが起こるのは当たり前で、その食い違いと混沌も面白さだけれど、しかしそれでも、共通の目的を持って一つになることが出来たり、お互いのことを理解することが出来るというのは、とても感動的なことだった。
舞台がバルセロナというところも、最高に良かった。それも、観光地としてのバルセロナではなく、サグラダ・ファミリアの建築現場や、裏道や、場末のバーをメインにした、生活の舞台として描かれるバルセロナ。差ではなく和を考えるべき、これからの時代にふさわしい、希望を与えてくれる映画だった。
【良かった場面】
・スペインの空港でマルティヌ(オドレイ・トトゥ)を見送るシーン
・住人全員でウェンディの浮気を隠すシーン
・ウェンディが英語読みで無理やりフランス語を読むシーン
・ウェンディの弟の、常軌を逸したマイペースっぷり

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