ジョージ・クルーニーの顔が濃い。
白黒映画の時代の二枚目というと、こういう俳優がスタンダードだったんだろうなあというような懐かしさを感じる。
身軽なバックパック一つで、何ものにも縛られようとせず、人生の多くの時間を飛行機の上で過ごす生活というのは、現代アメリカ版のジプシー族みたいなものだ。
その現実主義的であり虚無的でもある考え方には、ものすごく共感もしたし、その痛みや寂しさが伝わってくるところも多かった。
主人公の男の通算飛行距離は、1000万マイル。
月までの距離が25万マイルだから、どれだけの時間を放浪し続けたか、気が遠くなるほどだ。
傍からみると羨むほどの優雅な生活でも、その中身を覗いてみれば、冷え冷えとするぐらいの空洞が待ち構えているかもしれない。
効率化を考えて、ネットでモニター画面を通じて解雇通知を伝えようとする、エリートタイプの美人新入社員が、メールで別れを告げられるという因果応報的な場面も印象的だった。
結婚や家族とは何かということについて、今までにない角度から考えさせられた映画で、単純にまとめていない結末も好み。